(↑続き) ページ15
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人の感情の機微を読み取るのは,俺の守備範囲だ。
砂原が復学したという情報も俺が手に入れたものだし,浜田の2人が困ったときのためにすぐ動ける準備もしていた。
だが結局,あの2人の――アーヤの,困惑をいち早くつかんだのは上杉だった。
「全く,参るね。」
俺だって,アーヤのことを何より大事に思ってるのに。
言葉の上澄みだけを拾った上杉は,眉をひそめつつも,時間を愛する数学者らしく眼前の問題に飛びついた。
「愚痴るのは終わってからにしとけ。あと少しで授業が始まっちまう。お前,美門を探れよ。腹黒同士,お似合いだろ。」
予想通りな役割分担すぎてついに噴き出してしまった俺は,あまり悪くないと思う。
美門を探ってからじゃ愚痴が倍増しそうだ,とか。
どうせ俺らは授業に間に合わないだろ,とか。
腹黒同士って何だよ,人のこと言えるのか,とか。
――お前本当にアーヤのところに行きたいんだな,とか。
次から次へと湧き出る言葉はどれも上杉の機嫌を損ねるようなものばかりだったから,そのまま全てため息と苦笑で塗りつぶすことにした。
「まぁ,お前と美門じゃ正反対すぎるからね。だからといって,くれぐれも素直なアーヤを食っちまわないように。」
心の中だけでそっと,会議中ずっと沈んだ表情をしていた彼女を思い出す。
黒木てめぇ! と怒号が飛ぶのを背中で受け止め,美門に照準を合わせることで,自分の表情を上杉から隠した。
本当なら自分がアーヤに寄り添って,甘い言葉をかけ,ぐずぐずに溶かしてしまいたい。
でも彼女はそれを望んでいないかもしれないし,美門の探りが上杉には不向きなのも事実だった。
それに,上杉が人間として成長したことを,上杉の世界が広がったことを,友人として喜ばしく思う気持ちもある。
ほんの短くだけ,心からの笑い声をあげた俺は,カフェテリアから出ていった美門の背中を追った。
(↑おまけ前編)→←「たなばたひめ〜」より,とある場面の黒木君
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いしとせ(プロフ) - HUMAさん» 初めまして,HUMA様。コメントありがとうございます! 好きと言っていただけて,ものすごく嬉しいです。応援ありがとうございます,頭の中の話を全部形にできるよう頑張ります! (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - うみなさん» いらっしゃいませ,うみな様! おまけの翼は,うみな様のコメントが全ての始まりでした……おそらく,コメントいただけてなければ生まれることはなかったです(;・∀・) というわけで,こちらこそありがとうございました!m(_ _)m (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
HUMA(プロフ) - こういう本編の裏側というか、そんなお話大好きです!いしとせさんの他の作品も凄く好きです。更新頑張って下さい、応援しています! (2017年1月30日 21時) (レス) id: c49a03c503 (このIDを非表示/違反報告)
うみな(プロフ) - いしとせさん» こんにちは。黒木くんと翼のバトル!もう、大興奮でした。翼の策略も、黒木くんの想いも、全てが 物語に沿っており、楽しませていただきました(*^^*) 前回のコメで 私がポロっと口に出したことを 小説にしてくださり、本当に 嬉しいです!! ありがとうございました(#^.^#) (2017年1月30日 20時) (レス) id: 6278f7cc78 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - こんばんは,コメントありがとうございます。桜様も黒木君と翼推しなんですか! オトナな感じですね(笑) この2人のアイディアが出ればいいんですが……いろんな組み合わせを書いてみたいとは思っています。がんばります! (2017年1月15日 20時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いしとせ | 作成日時:2017年1月13日 21時