嘴平くんに好かれない２【鬼滅の刃】【キメツ学園】

第77話 ページ32

「誰だ！？」


声がした方を向く。


そこにいたのは―…



「あ…」



いつも私の夢に出てくる、あの赤毛の女性だった。


その顔には、狐の面。



初めて生で見た…
え、でも、なんでここに…？


「ほお、今度はしっかり消せていたようだな」

「消す…？」

「いや、こっちの話だ」


落ち着いた声。
彼女はふふと笑い、言葉を続けた。


「それにしても…お前は阿呆なのか？」

「は！？」

「幽霊を憑依させるなど…体を乗っ取られるかもしれない危険性もあるんだぞ」

「な、なに急に…あんたにそんな事…」

「私も力を持っている、しかもお前よりも強い力をな。
だからどれ程危険かも分かっている」


その言葉に押し黙る。
この人も力を…？！


「で、でも彼女は私の体を乗っ取る人なんかじゃない！」

「あいつらはそうやって騙すんだ。現に幽霊はどうなっている？」

「え…？」


そう言われ、私はモニターに目をやる。


楽しそうな彼女の表情。
その嬉しそうな感情と共に、何かが流れ込んでくる。



―このまま伊之助と、一緒にいたい



「…！」

「幽霊はどいつも一緒だ。狡賢く、自己中な者ばかり。そしてお前のような者は騙され、体を奪われる」

「…違う」

「安心しろ。私の力であの女を強制的にあの世に送ってやる。お前の体がとられる心配も―」

「やめろ！！」


私の声が空間に響き渡った。


「あんたがどれ程の力を持っているか知らないが、あの人は他の幽霊とは違う！

確かに今彼女は"戻りたくない"と思ってるけど、あの人は絶対体を返してくれる！そう約束したんだ！」

「…幽霊が約束を守るとでも？」

「守る！
私はそう信じてる」


短い間だったが、彼女と関わった時間の中で、私はそう感じた。


私は拳を強く握りしめ、彼女を睨んだ。


「良い幽霊と悪い幽霊の区別もつかないなら…！
そんな能力捨ててしまえ！！」


そして、思いっきり言葉をぶつけた。


「…！」


彼女は少し呆然とした後、また静かに笑った。



「…なるほどな。どうしてお前なのかが、分かった気がする…」

「は？」


何のことだよと問い詰めようと彼女に近づく、


―が、それよりも前に彼女が私の元へ飛んできた。



「まあ、とにかく休んでいろ」

「ちょ…！」


彼女が私の目元を手で隠す。


抵抗するも虚しく、私の意識が朦朧とし始める。




「あんたは…いったい……」





その言葉を最後に、私の意識は途切れた。






「おやすみ、A」





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