第70話 ページ25
幽霊さんはあれからすぐに伊之助の元へ戻った。
昼食を食いっぱぐれてしまった私は、ご飯を食べながら学園祭の準備を進めている。
しかし私の頭の中は、伊之助からどうやって彼女の情報を聞き取るかでいっぱいだった。
「(もし本当に伊之助の知り合いなら、聞くのが早い。でも何で私が知ってんだって話になるよなぁ)」
彼はあぁ見えて勘が鋭い。すぐに私のおかしな能力にも気付いてしまうだろう。
どうにかそれだけは避けたいのだが…さてどうしようか…
「オイ」
「うおっ」
後ろから急に声を掛けられ驚く。声を掛けてきたのは伊之助であった。
その背後にいた女性とばっちり目が合うが、伊之助にバレないよう自然に視線をそらした。
「お前何飯食ってんだよ、よこせ!」
「え、やだよ!」
「いいからよこせ!」
「あー!ふざけんなお前!!」
あろうことか伊之助は私が食べていたパンをひょいっと自分の口の中に放り込む。
怒った私は彼の頭を掴むも、逆ギレした彼が私の頬を引っ張った。
だんだんヒートアップしてしまい、周りの生徒が止めに入る。
最近は炭治郎でなくても、この光景に慣れたクラスメイト達が仲裁に入ってくれるようになったのだ、良くも悪くも。
「くっそ伊之助の野郎め…」
《…ふふっ、》
「!」
食べ物の恨みを晴らせずに私が唸っていると、美しい笑い声が聞こえた。
視線を移すと、幽霊の女性が楽しそうに笑っている。
幽霊でも、あんなに綺麗に笑えるのか…
私が出会ってきた幽霊と彼女が違いすぎて、私は思わず見とれてしまう。
「(この人のこと、助けたいな)」
美しい笑顔を見て、そう感じた。
彼女をずっと、この地で縛ってはいけない。
でもお盆は明日まで、私が幽霊を強く感じられるのも明日まで。
ということは、タイムリミットが近い。
だが伊之助に
「お前の背中にひっついてる女性知らない?」「女性の知り合いいない?」
…なんて怪しすぎる質問をすれば、気付かれる。
でもだからといって2人を直接接触させるなんて無理だ。
幽霊と人が関わり合うなんて…
―いや、まて。
なら、"人と人"になってしまえば…?
《Aさん…?》
「(相談があります)」
私の視線に気付いた彼女が話し掛けてきたので、心の中で話し掛ける。
多少リスクはあるが、背に腹は代えられない。
成功するかも分からないが、やってみるしかない。
私は、決意を固めた。
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まこ(プロフ) - なるとさん» なるとさん初めまして!コメントありがとうございます(^^) いつも見ていただきありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。 更新頑張りますので、ぜひこれからも見ていただけると嬉しいです!よろしくお願いします(o^^o) (2020年3月16日 10時) (レス) id: 5468609aea (このIDを非表示/違反報告)
なると - こんにちは。いつも楽しく拝見させていただいてます!がんばってね。 (2020年3月13日 21時) (レス) id: 3ad2e3812e (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - きなぽさん» きなぽさん初めまして!あああそう言っていただけてとても嬉しいです励みになります…!( ; ; ) ぜひこれからもよろしくお願いいたします(^ ^) (2020年2月7日 10時) (レス) id: 5468609aea (このIDを非表示/違反報告)
きなぽ - 素敵な小説に心が暖かくなりました! (2020年2月5日 12時) (レス) id: 8433dfe4be (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - ZERO-naさん» ZERO-naさん初めまして!確認しましたところ番号がごっちゃになっていました…教えていただきありがとうございます(^^)/ 流れは変わりませんので、ご安心ください!楽しんでいただけてとても嬉しいです!ぜひこれからも読んでいただけますと幸いです(^^♪ (2020年2月4日 21時) (レス) id: 274878ae19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まこ | 作成日時:2020年1月8日 13時