看板娘9 ページ10
「っむ、むぐ……!?」
「しっ。静かに」
浦原さんが真面目なトーンで言う。その圧に押され、大人しく抵抗をやめた。木の上からオレンジの彼を見下ろすと、不思議そうにキョロキョロして首を傾げながら歩いていってしまった。浦原さんの手が私の口から離れる。
「ぷはぁっ……う、浦原さん、なんですか!あなたも感じたでしょう!彼の
「ダメっス、Aサン。彼にボクらの話はしちゃあいけません。まだその時じゃないんスよ」
「……?浦原さん、彼を知っているのですか?」
「知らないと言えば知らないし、知ってると言えば知ってるッス」
いつも以上に何か意味深なことばかり言う浦原さん。オレンジの彼は何者なんだ。ただの人間に、あの霊圧はありえない。浦原さんを問いただしたくとも、彼の圧がそれを聞くことを許さない。
「…わかりました。今はこれ以上深追いはしません」
「流石、話が早くて助かるッス」
「今は、です。いずれ然るべき時に話していただきますから。ジン太やウルルの時と言い今回の入学式と言い、貴方は大事なことほど言わないんですから。……いつかみたいに」
ふい、とそっぽを向いて木から降りる。浦原さんも私の言葉にはそのまま何も言わず黙って降りて来て、「帰りましょっか」とだけ言ってきた。
「夜一様………いえ、…よ、夜一さんにも謝りに行かなくては」
「いいじゃないっスか、夜一サンもご満悦でしたよ」
「そこもですが、」
貴方の無茶に応えさせたことです、と言おうと振り向くと、浦原さんの顔がすぐ近くに。急になんなのだと固まって動けずいると、浦原さんが言う。
「…守らせてくださいよ。ボクの手が届くところくらいは」
切なそうな声でそんなことを言うものだから、つい気圧される。
「……う、浦原さん………」
瞬間、尻を撫でられる感触がして、顔を上げた浦原さんが笑う。
「このお尻とか♡」
……彼の顔面にもう一度私の拳が沈んだのは、言うまでもないことだ。
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作者名:名無し | 作成日時:2022年2月21日 5時