看板娘２５ ページ26
｢
柄巻が水浅葱色に変わって、鍔の形が雫型になる。始解するのすら、もう何時ぶりだろうか。
｢……久しいな、勿愛。｣
(…放っておきすぎだ。鈍っておらぬだろうな)
｢誰に物を言っている……と言いたいが、それはお前がこれから判断すればいい。何せもう年月を直ぐに答えられぬ程だからな｣
(……今更だ。主と認めるを取り下げようとは思わんが、舐めた振るい方をしてくれるなよ。お前は俺の分身だ)
勿愛は人の男の姿で具象化された。柄巻と同じ、澄んだような水浅葱の瞳にくすんだ孔雀青の髪。凛とした言葉の裏にいつだって憂いがあるような男だ。他の人たちからはよく似ていると言われたが、正直こんな陰険そうなやつと似ているだなんて不本意だ。
戦闘の相性は嫌という程いいから、特段不満に思ったことは無いのだけど。
｢こちらの台詞だ。舐めた力で誤魔化そうとしてみろ、金輪際二度と使われぬ、私の腰に差されるだけの鈍ら刀にしてやるからな｣
(ほざけ莫迦者。早く始めろ)
勿愛の言葉に、剣を引き抜いて構え直す。先刻私の霊力を込めて、私に攻撃するように動くハリボテたちを前に1歩踏み込んで体制を整えた。
力を込めて飛び出し、正面の敵の頭に一撃。横から来るもう二体を、正面の敵ごと勿愛を横に振り纏めて吹き飛ばす。そうしている内、他のハリボテたちが私を囲む。
｢はは、これは得意分野だ｣
ぱしゃ、と刀身が水に変わって大きく宙を舞う。ハリボテたちの身体を濡らしたと思うと、ハリボテたちの濡れた箇所は一気に粉々になる。勿愛蕾は、変化した水全てが私の剣先だと思って良い能力だ。
｢…うん、大丈夫。戦える｣
勿愛を鞘に収めて、ふうと息を吐く。勿愛は不思議そうに語りかけてきた。
(何故いきなり俺を抜いた。戦いでもあるのか)
｢……それは分からない。でも、浦原さんも覚悟を決めたようだから｣
崩玉を彼女に埋め込んだのならば、つまりそういうことだ。吉と出るか凶と出るかは分からないけど、彼は崩玉と…そして奴と、ケリをつけようとしてる。
(……お前はいつも、夜一と…あの男のことばかりだな)
勿愛が言ったその言葉に、私は言葉を返さなかった。
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作者名：名無し | 作成日時：2022年2月21日 5時
