看板娘225 ページ30
貴方から先に、友人を助けにいけと仰ったくせに。ぎゅうと私を抱きしめる手が何だか子供みたいでくすりと笑ってしまう。笑い事じゃないっスよ、と拗ねた声が耳元で聞こえた。
「……貴方は私が居らずとも大丈夫でしょうに」
「利害の問題じゃないんスよ。居なくても生きていけるから、手離していいワケじゃない。ボクに利があるから、護りたいワケじゃない」
「…存じてますよ」
私だって同じだから。浦原さんにつくことを諦めて藍染へ寝返るのだって、想像しただけで鳥肌が立つがやろうと思えば出来たこと。奴を神にして、新しい世界で聖女のように寵愛を受けるのもきっと可能性のひとつとしてはある事だ。でも、それでも、
「浦原さんがいいから、ここに居る。貴方を護りたいから、ボロボロだろうが立ち上がるし戦う。私は貴方じゃなきゃ、ダメなんです」
「…お揃いっスね」
「ちょっと違いますよ。浦原さんはこの世界を保つ為に動いているでしょ?三界の均衡が保たれるこの世界を愛してらっしゃる。私は正直、世界なんてどうでもいいんです。…貴方が笑う世界なら、他の全てが灰燼だとて構わない」
なんて、と冗談のように締めくくるも、どの程度本気かは充分伝わってしまったようで。浦原さんは漸くお顔を見せてくれたけど、その顔はどうにも泣きそうで、でもどこか嬉しそうで。困らせてしまったかな、そんな顔なさらないで。そんな意味を込めて微笑んでみせた。
「…死神皆須く、友と人間とを守り死すべし。
「ええ。Aサンは行くべきだ、友人と世界を護るために」
相変わらず、私を貴方のためには動かしてくれないんですね。そんな言葉が浮かんだけれど、それもまた浦原さんらしい。何にせよ、友と世界と、敬愛する人の冤罪証明を懸けたこの戦は負けられない。浦原さんが、穿界門を開く。
「飛ばした空座町の場所ならこっちの方がよく分かってます。おそらく先回りできるはずだ。ですがくれぐれも……」
「無茶はするな、でしょう。大丈夫ですよ、貴方を悲しませる気はありません」
浦原さんは私の言葉に笑って、そうして一言言った。
「…敵わないっスねえ……ボクが行くまで、無事でいて下さい。必ず」
「はい!」
私を生かす確かな約束ひとつを抱えて、私は断界へ飛び出した。
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渚(プロフ) - BLEACHに再熱した者です!この作品とても好きです!浦原さんカッコイイです!!引き続きお話読めるの楽しみにしています! (2022年9月5日 18時) (レス) id: 9dd9702176 (このIDを非表示/違反報告)
はっか(プロフ) - はわ、、BLEACH再熱してしまってこの小説に辿り着いて刺さりすぎて徹夜で全て読んでしまいました、、、!!すごく好きです理想の浦原さんで泣きそうです!!応援してます!!! (2022年6月21日 20時) (レス) id: 849b00c654 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し | 作成日時:2022年6月20日 19時