昔、隣の席だった君。【skt】 (ページ4)

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となり*4 ページ4

周りの泣き声にも余計涙が出てきて、最後には号泣してしまっていた。
そう、しないと言っていたのに。

『ほら、やっぱり泣いてるやん。』

そう、隣の席の彼に言われてしまいなんだか悔しくて顔を背ける。
残念ながら、ハンカチというものを忘れてしまっていたのだ。
だから顔を隠すこともできず、溢れ出る涙を指で拭うことしか出来ないでいた。

『これ、使ってよ。』

その声と同時に目の前に出てきた手。
その手には綺麗に折りたたまれた、
薄い赤の周りに白いラインが入ったシンプルなハンカチが握られていた。

『…え？』

ハンカチ、貸してくれるってこと？
事態がうまくつかめずに聞き返した私に彼は言った。

『だから、これ。
ハンカチ忘れたんちゃうの？』

貸してあげるよそうニッコリと言われた私に拒否するという考えは無かった。

『ありがとう。借りるね。』

私がそう言うと満足げに頷いた彼。
そのハンカチからは、ふんわりとした芳香剤の匂いがした。

……

「ん……。」

目を開けると閉められたカーテンの隙間から差し込む明るい光。

朝か……。

小さく伸びをして、ふと時計を見る。
その時間はいつも起きている時間よりも一時間後を示していて。

「ああ!やばい遅刻する!」

あと十五分後に駅に着かなければ、会社には遅れてしまう。

急いで身支度を整えて、部屋を飛び出す。
朝ごはんを食べていないのでお腹は空いているけれど、仕方が無い。

走って駅に着くと、ちょうど電車がやってきた。

…危ない。
あと一分でも遅かったら、私は上司にとてつもなく怒られていることだろう。

ホッとして、電車に乗り込む。
運よく空いていた席に座って、ボーっとしていると見ていた夢を思い出した。

中学校の卒業式。

今では昔の思い出だけど、鮮明に覚えている記憶。
鮮明に覚えているはずなのにそれは風景で、人や言葉は曖昧だった。

しかし、はっきりと覚えているのは、

『これ、使ってよ。』という声と、笑顔。

………当時中学生の私が好きだった隣の席の彼のことだ。