47話安価なモノ ページ5
「…おかしい。」
「どうしたの?」
今日も私宛の郵便がないことに思わず首を傾げていると、野坂が首を突っ込んできた。
「あぁ、いや、大したことじゃないんだけどね。
ロシアの方に新年のご挨拶の書状…じゃなくてお手紙を出したのに、まだ返事が返ってこなくて。」
「……へぇ?」
「…なによ?私にロシアの親戚がいるってこと、知ってるでしょ?」
「うん、…知ってるよ。」
含みのある言い方にちょっとドキリとしながら平然とする。
…本当のことを言えば、自分の遠い親戚がロシア人であることをいいことに、実はこっそりフロイへ簡単な挨拶の手紙を送っていたのだが、黙っておいた方が得策だ。
フロイ・ギリカナン。
ロシアにいた時にお世話になったギリカナン家の次男。飛行機で日本に帰る前、私に告白してくれた男の子だ。
このギリカナンといえば、世界的にも有名なオリオン財団を立ち上げ、世界中の貧しい人達にその莫大な資金で援助している。まさに善人の鑑だ。
ちなみにそのオリオン財団は、ヴァレンティン・ギリカナンを筆頭としていたが、彼は二年程前に亡くなってしまい今はその息子、フロイの兄だけれどベルナルドが跡を継いでいる。
そんなギリカナン家と私の間には今は亡き私の母がいた。
フロイの母_イリーナは、母と友人であったらしい。その関係は彼女達が大人になっても続き、私を両親が亡くなった後も続いている。
身寄りのない私を、良かったら我が家の養子にーなんて話もあったぐらいだ。
ただ__このイリーナは大切な友人の娘として私を度々気にかけてくれていたが、その裏ではかなり計算高く気難しい人だ。
だから、今ではその懇意を素直に受け取れず猜疑してしまうのだ。
…フロイの話に戻そう。
幼い頃から身体が弱かったフロイは引きこもりがちの少年だった。おまけに家族全員が働きに出ており寂しい毎日だっただろう。
しかし、ここで"無知だった頃のわたし"が登場する。
引きこもり気味の息子と友人の娘を会わせたことにイリーナの思惑が全く絡んでないだなんて到底思えないし、どこまで彼女のシナリオに沿っているのかわからないが、その結果、フロイとわたしは仲のいい関係なった。
まさに本で見る"お友達"の関係だったのだろう。
引き出しから例の安物の白い花の髪飾りを取り出す。
別れ際にあったあの出来事は、苦い思い出に違いない。
だけど、それでも手紙を出すことにしたのだ。
それが今できる私なりの最善であると信じて。
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沙稀乃(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» ありがとうございます!(*´∇`*)私の頭がポンコツのため、なかなか進みませんが、よろしくお願いします!\( ˙▿˙ )/ (2021年11月5日 0時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです!続きを待ってます!(*´ω`*) (2021年11月3日 20時) (レス) @page40 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - ピータンさん» コメ、ありがとうございます!!凄く面白いと言われて、もう既に心が有頂天になってるんでまともに返信ができませんが、本当に嬉しいです。ありがとうございます!更新のろのろですみません…! (2020年8月21日 16時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
ピータン(プロフ) - すごく面白いですね!これ野坂君がもっと大きくなったらどうなるんだろう?これからも楽しみにしてます! (2020年8月21日 11時) (レス) id: d4faf78640 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - こさめさん» え!?本当ですか!!ありがとうございます!!コメント本当にありがとうございます!嬉しいです! (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙稀乃 | 作成日時:2020年4月12日 12時