君に縋る【アレスの天秤】2

７１話兆し ページ31

「おはよう、Aちゃん。ふふっ、今日も可愛いね、」
何気のない朝、ベッドの中至近距離に変なことを言われ、

「一人でどこに行くの？一人は危ないから僕も行く」
どこに行くにしろ、何故か隣にいて、

「え、この写真？僕の宝物だよ。どのAちゃんも可愛いよね」
目の前で覚えのない私が写った写真を見てたり、

「そのカッターナイフ、危ないから僕がやってあげる。ほら貸して」
刃物を握るのも駄目だと…

「さっきの人、Aちゃんのなに？僕よりも大事？僕の方がいいよね？
ほら、僕が良いって言って？」
なぜかよくわからないところで怒るし、

「あのすみませんが、彼女はこの後用事があるのでまたの機会にしてくださいませんか？
…。
はい、ありがとうございます。


…行ったね。
え、用事？慌てなくて大丈夫だよ。
その場しのぎの言葉だから」
誰かと会話する度に、いつも彼が介入し即時終了。

「僕がいない間平気だった？誰にも話しかけられてないよね？」
数分程度いないだけでそんなことを言うのだから、過保護かと突っ込みたくなる…と。






レポートを書いていた手をやめて顔を上げた。
「…いや、やばくね？」

「ん、何が？」

隣の席で野坂…私の同居人が当たり障りもなく聞いてきた。

「……書くの早いなって思って」

彼の手元を見るともう彼の手からシャープペンシルはなく、本がある。
彼の机に置かれた紙を見れば、既にびっしりと埋めつくされて、すでに宿題は終わったみたいだ。
…ちなみに私はその半分だったりする。


同じ時間に始めたはずなのに…なんだか歯痒く思っていたが、野坂はその反面嬉しそうだ。
「ふふっ、それはね。レポートなんかに時間を費やすよりもAちゃんと過ごす方が有意義にな_」
笑顔で語りだした天才野坂を放って、レポートに専念することにする。
あー、レポートがあって良かった良かった。


隣から紙をめくる音が消えたかと思えば、今度は私の邪魔を始める。
「Aちゃんのレポート良かったら僕が代筆す」
「却下」
流石にレポートは自分が書かなければ意味がないし、第一私の癒しだ。
絶対にやらせない。

それに今のところ感想を書くだけなので特に困ることはなかった。

「それならお茶をついで」
「さっき飲んだばかりだから大丈夫」

ドアに手をかける音が鳴る前に野坂を止める。
…彼から離れれば誰も来なかったかとかの恐ろしい質問攻めをされるので、面倒極まりない。

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