66話 ページ24
彼はなぜか私の声かけに目を見開くも、…言葉にするもなくただ眉を歪めて微笑むだけだった。
「あの、どうしました?」
「…少し見ないうちにAは随分大きくなったな。それに比べて私は、まだまだだ」
ベルナルドって、こんなネガティブ思考だったろうか?
変だなと思いつつも、私は前と同じく当たり前のことを口にした。
「謙遜なさらないでください。貴方は本当にすごい人なんですから。」
ベルナルド・ギリカナンが凄いのは、本当の事だ。
なんと言ったってその若さで、周りから認められ理事長の座についただから。
ベルナルドはくすりと笑って、そうだといいな。と言えば、ちょうどいいタイミングで私の前に淹れたての紅茶が置かれる。
「ありがとう」
一応礼儀として執事に言うとその冷たい顔を崩すことなく彼はペコリと会釈するだけだった。
幼児にもそんな対応だなんて、なんて愛想がないおじさんなんだろう。 淡々とそう思った。
でも、財閥の執事だけあって、私情よりも仕事を選びそうな人だ。財閥の中に入る人間ならこっちの人柄の方が適しているのかもしれない。
それより緊張で渇いていた喉を潤したくて、紅茶をぐいっと一口飲む。
うん、流石一流の執事が淹れた紅茶だ。美味しい。
納得する美味しさを堪能していたが、ふと驚いた顔をするベルナルドと目があった。
「どうしました?」
「ああ…いや、まだAには早いと思っていたが……、そうか、もう、飲めるのか」
「あ…」
はっと、私は気づいた。
ベルナルドはストレートで飲めたことに驚いているのだ。
側に砂糖やらミルクからが入ってそうな陶器が2つほどあるが、以前はあれほど『苦い』と言っていたのに、一切それに手を付けず飲んだのだ。
…驚くのも無理はない。
「えっと、…試しに飲んでみたんです!紅茶って少し苦いですね」
無理のある笑みを浮かべて、慌てて角砂糖を紅茶の中に入れてぐるぐる混ぜる。
ベルナルドは顎に手を当てくすりと笑うだけで、不自然に思っていないらしい。
…よ、良かった。
彼との関係を拗らせたくはなかった私はぎくしゃくするばかりだ。こんな人と少し前まで普通に会話していただなんて、今の私には無理な話だった。…無知って怖いわ。
なんとかやりくりしているうちに、執事はやることなすことをやり終えてワゴンを引いて去ってしまった。
そう、机の上にたくさんのきらびやかなお菓子を置いて。
すぐに戻るという約束を守れそうになかった。
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沙稀乃(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» ありがとうございます!(*´∇`*)私の頭がポンコツのため、なかなか進みませんが、よろしくお願いします!\( ˙▿˙ )/ (2021年11月5日 0時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです!続きを待ってます!(*´ω`*) (2021年11月3日 20時) (レス) @page40 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - ピータンさん» コメ、ありがとうございます!!凄く面白いと言われて、もう既に心が有頂天になってるんでまともに返信ができませんが、本当に嬉しいです。ありがとうございます!更新のろのろですみません…! (2020年8月21日 16時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
ピータン(プロフ) - すごく面白いですね!これ野坂君がもっと大きくなったらどうなるんだろう?これからも楽しみにしてます! (2020年8月21日 11時) (レス) id: d4faf78640 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - こさめさん» え!?本当ですか!!ありがとうございます!!コメント本当にありがとうございます!嬉しいです! (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙稀乃 | 作成日時:2020年4月12日 12時