６５話 ページ23
「無理、なさらなくていいんですよ」
「無理はしてないさ。」
優しい笑みを浮かべて彼は返した。
…ああ、駄目だこれ。
絶対に髪を伸ばすやつだわ。
「Aも何か飲むかい？」
コーヒーを片手に彼はふと思い出したかのように言った。
まあ、確かに有り難いけど遠慮する。
「えぇっと…私の事は気にしなくても…」
だいたいあの野坂を待たせているのだから手短に終わらせたいのだ。
それはベルナルドとて同じのはずなのだが、目の前にいるこの美青年は全く急ぐという雰囲気がない。むしろゆったりしている。
彼が靭やかにパチンッと指を鳴らせば、すぐ様応接室の扉が開き、そこから色々ものがのったワゴンを押す執事らしい人が入ってくる。
「え…」
「失礼致します」
彼は機械みたくテキパキと動き始め、目の前になにやら高そうなお菓子やらが並び始めた。
目の前のふんわりとしたケーキに目をそらせば、今度はワゴンの上に大量のケーキやお菓子を見てしまい、驚愕のあまりに手前にあるケーキに視線を戻す。
…いや、美味しそうだけど、まさかあれ全部！？
思わず顔を歪ませてしまった。
「もしや、気に入らなかったかい？ならすぐに別の物を」
ジロリと執事を睨んだために、咄嗟に口からでまかせを言った。
「ち、違うんです！…私、お金持ってないから、こんなの食べられないなって思って……気を使わせてごめんなさい」
咄嗟の割には結構上手い言い訳だなと自分でも思ったが、ベルナルドがどう思うか定かでない。…じっと息をこらし彼を見た。
私の言葉をどう受け取ったのか、手を止め指示を待つ執事を見たあと目を伏せてただロシア語で一言「Добавить чай」と言った。
確か、入る、お茶…って意味だったから
茶を入れろ…かな？
その言葉通り、黙々とカップに注ぎ始める執事だったが、その様子を見るベルナルドの顔は凛々しいお顔立ちだ。
…だが、どういうわけか私はその表情が沈んでいるように見えた。
(気のせい…かな？)
観察してたせいで目が合うが、彼はそれを窘めることもなく、むしろ何かを聞き出そうに口を開けた。
「…君は、…いや、何でもない」
「えっ…ベルっ…ナルド…さん？」
初めて見る彼の表情に心配になってきて、声を掛けてしまった。
体の方が癖で『ベルおにいさま』と言ってしまいそうになるが、寸のところで修正する。
あぶないあぶない。
こんな薄汚い小娘にあんな安っぽい名前で呼ばれるなんて恥に決まってるのだから。
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沙稀乃(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» ありがとうございます！(*´∇｀*)私の頭がポンコツのため、なかなか進みませんが、よろしくお願いします！\( ˙▿˙ )/ (2021年11月5日 0時) (
レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです！続きを待ってます！(*´ω｀*) (2021年11月3日 20時) (レス) @page40 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - ピータンさん» コメ、ありがとうございます！！凄く面白いと言われて、もう既に心が有頂天になってるんでまともに返信ができませんが、本当に嬉しいです。ありがとうございます！更新のろのろですみません…！ (2020年8月21日 16時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
ピータン(プロフ) - すごく面白いですね！これ野坂君がもっと大きくなったらどうなるんだろう？これからも楽しみにしてます！ (2020年8月21日 11時) (レス) id: d4faf78640 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - こさめさん» え！？本当ですか！！ありがとうございます！！コメント本当にありがとうございます！嬉しいです！ (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙稀乃 | 作成日時：2020年4月12日 12時
