お祝いのタルトケーキ（２） ページ39
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「うーん…。」
私は泉くんと言葉を交わした後からずっとこの状態だ。
あの後瀬名くんは私に一つお土産に大きな爆弾を落としていった。
泉「ねぇ、あんたさぁ、いつまでなずにゃんのこと“仁兎くん”って呼ぶわけぇ？」
そう言い逃げされたもんだからそれからずっと頭の中は彼の呼び方についての思考がぐるぐる回り続けていた。
「な…な、ずな………」
小さく小さく呟くだけでもこの調子なのだから、きっと本人を目の前にしたらもっと無理。
この5年の間でだいぶアイドルたちの呼び方は下の名前に移行していった。
もともと下の名前で呼んでいた、Ra*bitsの年下3人組や凛月(いじわるばかりするので5年の間で呼び捨てになった)、葵兄弟等はそのまま。
最初は恐れ多くて名字でしか呼ぶことのできなかったfineやEDEN、紅月やKnights等の強豪ユニット(最初から下の名前で呼んでいたTrickstarは除く)もだんだんと関わっていくうちにアイドル側から下の名前で呼ぶよう指示されたり、自然と下の名前で呼ぶようになっていたりした。
それなのに仁兎くんだけはなぜか下の名前で呼べない。
なずな「Aちん？どうした？」
「ふぇぁっ！」
ぐるぐると思考を巡らせていた相手が突然目の前に現れた為、変な声を出しながら肩を震わせる。
なずな「何か考え事か？眉間にしわ酔ってたぞ？」
そう言いながらぴとり、と眉間に指をあてて来るもんだから私の心臓は今までで聞いたことがないくらい大きく早く脈を打っていた。
「な、なんでもない！うん、泉くんにちょっとからかわれただけで何もない！大丈夫！」
不自然すぎたかもしれないけれど、そんなことを考慮する余裕がないくらい目の前にいる仁兎くんにドキドキさせられていた。
なずな「そ、そうか？」
仁兎くんは全く納得のいっていない顔をしていたけれど、こればっかりはあまり問い詰められたくない。
ちょっとゆっくり考えたい。
なずな「あっちにケーキが出るみたいなんだけど、今大丈夫？」
どうやら追及するのはやめてくれたらしく、本来仁兎くんが私に声をかけた本題の方に入ってくれた。
全く問題は解決していないけれど、少し先延ばしできただけでちょっと寿命が延びた。
仁兎くんに生かされた私は仁兎くんに案内されるがまま会場の中央に向かう。
ほっと肩をなでおろす反面、これくらいもできない自分に嫌気がさす。
呼び捨てくらい大したことないはずなのに。
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作者名：小野屋 | 作成日時：2021年2月6日 18時
