ちぐはぐ社会人（２） ページ34
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確かに忙しくはなったし、大学にもずっと続けてきた定食屋のバイトもやめて社会人としてESで働いているけれど、どうも今までの延長上にある生活のせいで社会人の実感が全くない。
それなのにステージ衣装監督なんて仰々しい名前の役を担うことも少なくなくて、中身は子供のまま外側だけ大人になってしまったようなちぐはぐ社会人をやってる。
木崎さんには「じきに慣れるよ！」なんて言ってたからあんまり気にしてはないけれど。
今度あるライブの衣装を一から十まで私が監督をして作るなんて言われたもんだからそわそわして落ち着かない。
なずな「おーい！Aちん！丁度よかった！光ちんが言いたいことあるってさ！」
光「うぅ…またズボン破いちゃったんだぜ…」
「えぇ！？また！？頑丈にしたはずなんだけどなぁ…？また、背伸びた？ちょっと採寸してみよっか！」
最初に言った通り、あれからというもの、お互いに忙しくて会った時に少し話したり、メッセージのやり取りはしているものの、ゆっくりとした時間は取れていない。
私は見ての通り、衣装の制作・調整・修理の仕事に追われているし、仁兎くんの方は大学卒業と同時に本格復帰したことを受けて、あちこちで引っ張りだこ。
大学と芸能界を両立する若手が仁兎くんくらいしかいなかったから、どうも「仕事も学業もきっちり両立させたスーパーアイドル」的な扱いになっていて、仁兎くんの株はどんどん上がっていってる。
夢ノ咲時代に築いたコネクションのおかげで番組プロデューサーとか業界のお偉方に呼んでもらえるんだとか。
あ、これは遊木君に聞いた情報。
というわけで度々仕事として会うには会うけれど、例の話をするような時間は取れていない。
はぁ、やっぱり衣装制作係はブラックだなぁ…。
残業だらけで、労働基準法？なにそれおいしいの？って感じ。
まぁ、その分給料はいいし、残業代もきっちり支払われているからお金には困らない。
ただ、お金があっても使うところがないんじゃ意味がない。
最近は自分の物は基本的に通販頼みでお店に行く時間なんてない。
仕事が終わるころに空いてるお店と言えばコンビニか居酒屋か牛丼チェーン店くらいだ。
衣装制作係としてはウィンドウショッピングとかで最近の流行チェックとかしたいんだけどそれすらも叶わず、代替策として朝の情報番組の街角スナップコーナーで情報を仕入れている。
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作者名：小野屋 | 作成日時：2021年2月6日 18時
