16.記憶と信じるべき者 ページ26
「お前に命令や、例え十四番隊に命令が下されたとしてもお前は待機や」
「どうしてですか?」
さらりと伸びた金髪が覆い被さる背中を眺めながら不思議そうな首を傾げる。
うーん…と頭を悩ませるが彼を不機嫌にさせるような行動が思い浮かばない。
「難儀な話やないわ。せやから安心しぃ」
安心させるように僕の頭を優しく撫でながら優しい瞳で僕を見つめる。
そうだ、この顔が、この声が好きだった。安心できたんだ。
僕は昔からこの人の後ろに立って歩むことがずっと続く幸福なのだと思っていた。
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目を覚ますとそこは四番隊の総合救護詰所だった。
瞼に乗った雫が酷く重く感じた。
それと同時にあの時藍染に負けたのだと理解をした。
しかし不思議と悔しさは無かった。それもそうか、実力差と負けることを理解していたからと思いながら再び目を瞑る。
「いっその事そのまま起きなかったら」
「そんなこと言わないでくださいよ」
小さな言葉に思わず目を丸くする。
いつの間にか僕の横たわる布団の傍に透助が居た。彼は何処か悲しそうに俯いていた。
「貴方が居なくなったら誰が悲しむと思うんですかこの馬鹿」
「馬鹿は君の方でしょ?それに誰も本気で思ってないからさ」
彼から視線を外すように反対を向く。そうだまだ決まったわけじゃなかったんだ彼らが死んだなんてことは。
「それより藍染は?」
「っ…取り逃しました」
「…だと思ったよ」
悔しそうに言葉を放つ彼に小さく言葉を零すと彼は驚いたように声を漏らした。
「貴方、一体どこから知ってたんですか…」
「さぁね?」
ふっと笑みを浮かべながら言うと彼は怒りを含んだ顔をした。
それはそうか昔から断片的なことしか言わなかったから彼的にも僕を怪しいとみなしたのだろう。
「ただ、まあ初めからこの一連のことは全て藍染が企てたのだと知ってはいたよ。旅禍の侵入に藍染殺害、朽木ルキアの処刑。全てが藍染の思い通りに進んでることもね。いや、もっと昔から彼の掌の上で踊らされてたのかもね」
僕がそんな言葉を吐くと彼は悔しそうに口を噛みながら瞳に涙をためて僕を睨むように見ていた。
「知ってたんですね…隊長。これが始まった時からずっと。…それよりも前の方が正しいですか…だから、だから…!俺に藍染を警戒するよう伝えたんですね…そして、また貴方は何も言わなかった…!隊長っ!貴方はいつになったら俺に話すんですか…!」
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作者名:しろねこのみみ | 作成日時:2023年11月21日 23時