お世話１６日目 ページ17
「入道コーチー…」
「うるさいぞ小娘。
わしは意見は変えん！
わかったら黙っとれ。」
試合も練習何もさせてもらえず
暇すぎる皐は
ベンチに座って空を眺めるだけ
「暇そうだね。
こんな所で何してるの？」
振り向くと
貼り付けた様な笑顔の葉月
皐は大きく溜息を吐き
前を向いた
「無視するなんて酷いよ…
時間あるなら、少し話さない？」
「…コーチ、
少し休憩します。」
ベンチから立ち上がり
コートを出て、屋根付きのベンチへ向かった
「あれ。
皐はどないしたんや？」
試合を終えた種子島が
白石に尋ねた
「ホンマですね…
でも、すぐに帰ってくると思いますよ。」
「はい、どうぞ。」
「どーも。」
葉月からジュースを受け取り
開けて飲み始めた
葉月はなにか落ち着かないのか、
ジュースの缶を持ったまま、
辺りをキョロキョロと見る
「…座れば？」
目の前でうろちょろされるのが嫌で
ベンチを指さすと、
「失礼します」と言って座った
「…あのさ、」
「うん？」
「なんで此処に来たの？」
ジュースを飲むのをやめて
葉月の方を見ると、
凍るような目つきでこちらを見ていた
「…知らない。」
「知らなくなんかないでしょ？！」
「チッ…うるさい。
私だって好きでオーストラリアなんか来るかよ。」
睨みつけると
一瞬躊躇ったが、鼻で笑ってきた
「ホント、威勢は良いよね。
人の言うことは聞かない自由人だけあるね。」
わざと「自由人」を強調する葉月に
皐は溜息を付いた
「良いよねえ…
親の意見もなにも聞かずに、自由奔放で。
こっちの苦労も考えて欲しいんだけど？」
「そんなの知らねえよ。
親の言いなりでしかないお前の事なんて。」
「言いなりなんかじゃない！
私はね、あんたとは違うの！
家のことを考えて、動いんてんだから！」
声を荒げる葉月に同時もせずに
「そう。」と淡々とする皐
「ま、あんたがうちの人間だって
気づかれなきゃいい話なんだから。
いつまでも、“斎藤”として、
生きればいいのよ。」
葉月は立ち上がり、
缶をゴミ箱に入れた
「じゃあね、“朝霧皐”さん？」
ニッコリと不敵な笑みを浮かべて
葉月はその場から立ち去った
残された皐は
空を見上げ、再び舌打ちをした
「お前がうるさいから、
“齋藤”て名乗ってんだよ。」
あーあ、
ホント、めんどくさい
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作者ホームページ：なし 作成日時：2015年8月28日 20時
