第14話 話題性 ページ16
「手、離してくれない?」
彼女の言葉を頭の中で再生させる
そして、自分の手の位置を見た。
「あ、こ、これは失礼。」
慌てて方から手を離した。
彼女は顔色を変えることなく、「いえ」と一言。
「そういえば、
もう自由に回って良いですよ。」
そう言うと彼女は
そそくさと歩いて行き、人ごみの中に隠れてしまった。
残された柳生は、腕時計を確認して、
また、校舎へと入っていった。
向かってくる人を避けながら
左右に並ぶ屋台を見る。
特にめぼしいものはなく、
先ほど彼に奢ってもらったため
お腹もそこまで空いてはいなかった。
「っと、失礼します。」
重たくなった扉を開いて
奥の席へと座った。
別塔だとはいえ、外が騒がしいせいか
自分の声が、いつもよりも、大きく反響して聞こえた。
「文化祭が終わる時間まで、一休み、しよ…」
机に顔を伏せ、目を閉じた。
-
文化祭が終了し、解散となった時、
柳生は一人、教室から出ていき、図書室へ行こうと考えていた。
「柳生、図書室か?」
「ええ、そうですよ真田くん。
それでは、お先に失礼します。」
外はもう、オレンジ色から、
少し薄暗い色に変わっている。
早く帰らなければならない、
でも、まだ、書いていない。
彼女との、“会話”はまだしていない。
図書室の前に来て、今更ながら思う。
流石にもう、閉まっているのではないか。と
「もしも空いていなかったなら、
明日にでも、書きましょう。」
何故自分がこんなにも返事を書きたかったのかはわからない。
義務や指名感を感じているのだろうと考えた。
扉を開け、電気をつけた。
急がなければ、と、足を速めると、
奥の席に、人が座っていた。
「おや?あの人は確か…」
明るい茶色のミディアムヘアー
今日、自分にお茶を渡してくれた少女だった。
柳生は声を掛けようと思ったが、
昼間みたいな態度の様子だと、どうやらそれは難しい。
「人がいますが、
こればかりは仕方ないでしょう。」
そっと本棚から日記を抜いて、
彼女から見えないところの席に座り、ノートを広げた。
○月×日
本日の「海原祭」は無事終了しましたね。
私は特に、良い思い出はなかったです。
紳士さんは、どうですか?
「……うーん、彼女は良い思い出がなかったのですか。」
せっかくの文化祭なので
その話をしようとしたのに、する事ができなかった。
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年10月25日 21時