第１３話 東棟 ページ15
「…さて、なにを食べようかな。」
窓ガラスに貼ってあるクラスマップを見て
私は東塔の奥へと進む。
角を曲がれば、すぐ側に自販機があり
ポケットから小銭を出して投入した。
「どれ、飲もうかな。」
並んでる飲み物を見て、
お茶があったので、手を伸ばした。
「う、あー!!!」
「？！」
突然、後ろのトイレから唸るような声が聞こえ
前を見ずに、ボタンを押してしまった。
「……」
押して出てきたものを見て、睨めっこ。
自分が一番望んでいないものが、出てきてしまった。
眉間に皺を寄せ、後ろのトイレを睨んでいると
口元をハンカチで抑えている一人の男子生徒が
真っ青な顔で出てきた。
「う、うう……あんなに不味いとは…
彼女に料理はきちんと学ばせるべ…き…」
ブツブツと呟くと、
吐き気を催したのか、その場に座り込んでしまった。
ひよりは持っているモノを見て、
少年に近寄る。
「…これ。」
「え？あ、いいんですか？」
数回頷くと、申し訳なさそうに
「ありがとうございます。」お礼を言って、
お茶を一口。
「お見苦しいところを見せてしまいましたね。」
「いえ。」
「お茶の代金はきちんとお支払い致します。
いくらで」
「いえ、結構です、大丈夫です。」
「そ、そうですか。」
ひよりは用がなくなったため、
東塔の奥に歩き出す。
「あの。」
「？」
「もしよろしかったら、
お礼と言ってはなんですが…」
すれ違う、同学年の生徒。
がやがやと賑わう人ごみを抜け、
外の屋台に並んだ。
「これだけで良いんですか？」
「大丈夫、もう自由に回ってください。」
態度が素っ気ない彼女に柳生は
苦笑いしながら頷く。
彼女は…人との関わりはしないのでしょうか…
すれ違う女子は、振り返り彼女を見るけれど、
彼女は声すらもかけないですし…
柳生は、気を使って声を掛けないようにしたかったが、
なにも無言で彼女の後ろを歩くのはなんだと思い、
何回か、会話をしようと試みていたのだ。
「におー、たこ焼きは？」
前から、少女が走ってきていた。
後ろを見ながら来ているため、俯いていたひよりに
思い切り衝突。
「いってて…あ、ごめなさい、大丈夫？」
「へ、へいきです！」
なぜか強めの口調で言われ、
少女はチラリと柳生を見ると、直ぐに走り去っていく。
「彼女は一体、何をしたかったのでしょうか…」
「あのさ、腕、もう離してくれない？」
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作者ホームページ：なし 作成日時：2015年10月25日 21時
