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トパーズは問い掛ける ページ12

おかげでおそ松は殴られずに済んだが
先程の雰囲気は完全に殺す瞳でいたので、おそ松は不思議に思った。



「………なんて、ないよ」

「…?」



暫くおそ松は身動きが取れないでいると、不意に十四松が何かをボソリと口にした。

おそ松は眉を顰めると、十四松はまた同じ言葉を繰り返す。



「Aちゃんが泣いてる事より、大切な事なんて………ないよ」

「……」



十四松は悲しそうな目をしていた。

いつもは笑っている彼が、だ。


これにはおそ松も驚いたが
それほどまでに十四松もまた彼女を大切に思っているんだと伝わり、おそ松は黙り込んだ。



「…どうしてAちゃん、泣かせたの…?」

「……」

「Aちゃん、すっごく悲しそうだった。
いつもは笑ってるのに、おそ松兄さんと出掛けて帰って来たら、泣いてた」

「…」

「ねぇ、どうしてそうなっちゃったの?
どうしてAちゃんは泣いてたの?

おそ松兄さん、何したの……?」



震える声で問う十四松。

眼前に突き付けられた拳も同様に震えていた。


おそ松は終始黙り込んで何とも言えない表情をしていたが
不意に溜息を1つ吐くと、言いづらそうに十四松から目をそらしながら、答えた。



「……Aちゃんに、嫌いって言っちゃった」

「…!」

「でも誤解なんだ。なんて言うか…タイミングが悪かったって、言えばいいの…かな。

わざとじゃないし、勿論Aちゃんの事は嫌いじゃない。
でも、あの時俺は……」



その先を言う前に、おそ松の体は後方に傾いた。


頬に伝わる鈍い痛み。

口の中に、鉄の味が広がる。



地面に尻餅をついたおそ松、顔を上げると、そこには俯いたままもう片方の拳を突き出した十四松がいた。


十四松がおそ松の顔面を殴ったのだ。



「___なんで!!そんな事!!言うのっ!!!」



十四松の怒鳴り声が、路地裏に反響する。

この時十四松は何故か、苦しそうな顔をしていた。



「十四松……」

「Aちゃん、おそ松兄さんの事大好きなのにっ!!すっごく大好きで!!おそ松兄さんいなくても、おそ松兄さんの話するぐらい大好きでっ!!」



尚も怒鳴りつける十四松。


その姿におそ松は呆気に取られていたが、ふと十四松はガクンと肩を落とすと、先程とは打って変わって低く暗い声音で続けた。



「……誰かがおそ松兄さんの代わりになんて、なれないくらいに、好きなのに」

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(プロフ) - 朝から暇潰しにと軽い気持ちで読み進めてたんですが、書き方や設定の作り込みにすごく惹き込まれて一気に最終章まで読み進めてしまいました……特に主人公対兄松それぞれのやり取りにはすごく圧巻したというか、兎にも角にも笑いあり感動ありですごく面白かったです;; (2022年4月30日 0時) (レス) @page50 id: a82882ac10 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - トマトの王様さん» コメントありがとうございます!終わってしまいました…!楽しんで頂けたようで良かったです^^ここまで読んで下さりありがとうございました〜!! (2019年8月1日 1時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
トマトの王様 - うわあぁぁぁぁぁ!遂に終わってしまった…!( ;∀;)読んでてとても楽しかったです。お疲れ様でした! (2019年7月31日 14時) (レス) id: 5390b171c6 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - arumo?さん» コメントありがとうございます!お疲れ様ですっ( ˇωˇ ) (2018年10月10日 0時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
arumo?(プロフ) - お疲れ様です! (2018年9月29日 11時) (レス) id: ee4365cb85 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:*IJu* | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年9月9日 1時

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