サファイアは騙された ページ6
「こうして遠くに車走らせたのも、アナタに頼んだのも、おそ松と喧嘩して分かれたのも……
全部ぜェんぶ、この為よっ!!」
本性を表した彼女は、まるで役者にでもなったかのように大袈裟に両腕を広げて尚笑う。
そこまで言われて、ようやく彼女の企みに気付いたカラ松は、大きく目を見開いて驚いた顔をしたまま、暫し固まってしまった。
この時のカラ松は思考が停止してしまったのだ。
無理もない。今まで純粋に想いを寄せ、出来る限り尽くしてきた相手に騙されてしまったのだから。
騙された怒りよりも、ショックの方が大きく
僅かに視線を落としても、まだ『ありえない』と言いたげに口をパクパクと動かす。
そんなカラ松に彼女は追い打ちをかけるようにクスクス笑うと、憐れむような、小馬鹿にするような口調で吐き捨てた。
「ああ、ああ、可哀想に……余程ショックなのね。
アナタ、この子の事好きだったみたいだしね。そりゃあ、無理も無いわ」
「っ…?!」
何気なく…なのか、それとも敢えてなのか。
続けて紡がれた言葉にカラ松は途端に体を反応させ、バッと顔を上げる。
そうして彼女の方を見上げると、彼女はまたクスクスと笑いながら、おもむろにカラ松の耳に手を伸ばした。
「あらあら、照れてるの?ウブねぇ…耳が赤くなってるわ」
「なっ……な、何故っ……き、気付いたっ…?!」
「普段の様子からバレバレよ。アナタわかりやすくこの子に視線を注ぐもの。
アレで気付かないのはこの子くらいよ」
「…?この子…?」
「……ああ、そう言えば、おそ松は言ってないんだっけ?」
不意に彼女の口から兄の名前が出され、カラ松はまた反応を示した。
途端に眉間にシワが寄っていき、カラ松は僅かに目を伏せる。
彼女はそのカラ松の様子に気付いていないのか、そのまま自身を指しながら言葉を続けた。
「私はアナタ達の知っているAじゃない……
Aを守る為に存在する、別人格……『クロ』よ」
「クロっ……?」
何処かで聞き覚えのある名前だ、とカラ松は視線を彼女の手元にあるぬいぐるみに向けた。
普段なら彼女の腕に大事そうに抱かれているその黒いぬいぐるみは、その時は首輪を乱暴に掴まれて、宙吊り状態になっていた。
こんな扱い、決してカラ松の知っているAはしなかった。
そう言えば……と、カラ松は今日1日を振り返る。
今更ながら、彼はここまでに抱えていた数々の違和感を思い起こした。
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柊(プロフ) - 朝から暇潰しにと軽い気持ちで読み進めてたんですが、書き方や設定の作り込みにすごく惹き込まれて一気に最終章まで読み進めてしまいました……特に主人公対兄松それぞれのやり取りにはすごく圧巻したというか、兎にも角にも笑いあり感動ありですごく面白かったです;; (2022年4月30日 0時) (レス) @page50 id: a82882ac10 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - トマトの王様さん» コメントありがとうございます!終わってしまいました…!楽しんで頂けたようで良かったです^^ここまで読んで下さりありがとうございました〜!! (2019年8月1日 1時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
トマトの王様 - うわあぁぁぁぁぁ!遂に終わってしまった…!( ;∀;)読んでてとても楽しかったです。お疲れ様でした! (2019年7月31日 14時) (レス) id: 5390b171c6 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - arumo?さん» コメントありがとうございます!お疲れ様ですっ( ˇωˇ ) (2018年10月10日 0時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
arumo?(プロフ) - お疲れ様です! (2018年9月29日 11時) (レス) id: ee4365cb85 (このIDを非表示/違反報告)
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