サッカーと大罪人とお好きな松とヒーローと【短編集】2 (ページ27)

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男性恐怖症とキミ【皆帆】ページ27

唐突だが、私は男性恐怖症である。

あ、恐怖症って言っても自分の中では、だけれど。

だって男の人って皆身長が高いし、乱暴だし、デリカシー無いし、強情だし(偏見)

とにかく苦手、苦手なの。

だから極力話そうとはしない。
触れるなんてとんでもない。そんな事はしないというよりも出来ないだろう。

だから、不思議なんだよねぇ……

「今日は天気良くって良かったね、Aさん。
やっぱりお弁当は外で食べるのが1番だよ」

今、私の隣に皆帆君がいて

ﾆｺﾆｺ笑いながら、私の方を見て、私の名前を呼んで話し掛けてくるのが。

いやいやいや、何で！？どうしてこうなった！？

つか皆帆君は何故私の名前を呼ぶ！？

ああ、いや確かに私の名前はAだよ？
大空Aって名前だよ？？間違ってないよ？？？

だけどさ、私はさっきも言ったように男性恐怖症(自称)
男とは話さないから当然男の友達なんていないワケ。

ましてや昼休みに一緒にお外でお弁当食べるような仲の子なんて、女子の中でも少ないと言うのに……

「そういえば次の時間って何だったっけ…？
移動だったらちょっと早めに戻らないとね」

そんな事どうでもいいわ！

とりあえず今は黙ってお弁当食べながら、この状況を打開する方法を何とか考えなくては……
なるべく失礼なく、なるべく自然に、そして迅速に…

「…ねぇ、Aさんって好きな人いる？」

「は、えっ…！？」

頭の中で思考していると、ふと彼にまた名前を呼ばれて思わず変な声を出してしまった。

……って、す、好きな人…？

い、いきなり何を言っているんだコイツは。

「え、やっ、えっと……わ、わた、私……その……」

「あ、やっと反応してくれた」

話の内容と、唐突に話し掛けられた事に私の頭はパニックに陥り、声が震えてしまう。

すると皆帆君はｸｽｯと微笑み、「それで？」と首を傾げて私の顔を覗き込む。

………近い。

「え、あっ、え……と……」

皆帆君との顔の距離の近さに、私は思わず固まってしまう。

近い、と言ってもきっと皆にとってはこれが普通の距離なのかもしれない。
でもあまり男性には近付かない私にとって、その距離は私を恐怖させるのには十分過ぎた。

「あ……いや……そ、の……」

バクバクと鳴り響く心臓。

脳内では危険信号が猛烈に点滅するが、体は全く動かなくって。

終いには手足が震え出し、持っていたお箸がするりと私の手を抜けていった。