サッカーと大罪人とお好きな松とヒーローと【短編集】2 (ページ26)

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私だけの1時間【バン】ページ26

「ふわ～あ…ねみぃ♪」

「何でだよ…」

昨日酒飲んですぐ寝たクセに。

隣で大きな欠伸をするバンに私は呆れ、一言吐く。

珍しく彼は本当に眠いそうで、さっきからﾌﾗﾌﾗと体を動かし、今にも椅子から転げ落ちそうだ。

仕方ないので彼を寝室に運んでもらうため、キングを呼びに行こうとしたら
不意に何かに服の裾を引っ張られた。

「どこ行くんだよ、A♪」

…バンだった。

彼はその大きな手で私の服を裾を掴みながら首を傾げ、私の顔を覗き込む。

私はその離してもらうよう言うが、どうも彼は離してくれないらしい。

「どーこ行くんだって聞いてんだよ♪」

「アンタ眠そうだし、キングに運んでもらおうと…」

「イヤだ♪俺は此処にいる♪」

強情なヤツだな、コイツ。

こうなるとコイツはてこでも動かないだろう。
とゆうかそろそろ裾を離してほしい。

「…あ、そーだ♪」

仕方なく再び椅子に腰を下ろすと、バンは何かを企んでいるかのようにﾆﾊﾟｯと笑って、裾を離してくれた。

まったく、何を企んでいるんだろう。

まぁバンの事だし、どーせろくでもない事…

「っ…！？」

彼の笑顔から目をそらし、溜息を吐いたその直後

ｽﾞｼﾘと隣から、何か重いものが寄り掛かってきた。

その正体は見なくてもわかる。

「ばっ…」

「ちょっとだけ寝るわ♪その間枕になってな♪」

「え、ちょっとってどれく…」

私の頭は混乱し、彼に尋ねようとしたが、その前に耳元で大きないびきが響く。

話を最後まで聞けよ！
てゆーかいきなり人の方に寄り掛かるとか何なの？！

つかバンくっそ重いしデカイし、いびきうるさいし重いし……

「っ…顔近いしっ……」

すぐ横には、バンの顔。

このまま彼の方を向いたらきっと、鼻と鼻がぶつかるような、そんな距離。

私の心臓はﾊﾞｸﾊﾞｸと喧しく鳴り響き、顔に熱が集中していく。
きっと今の私の顔は真っ赤なんだろうな。

「人の気も知らないで……馬鹿バンっ…！！」

横目で幸せそうに眠る彼に向けて吐き捨てる。

本当に幸せそうな顔。
一体どんな夢を見ているんだか。

「っ……馬鹿……」

そんな彼の髪を撫で、私は歪に微笑んだ。

彼が眠ってからの1時間は、まるで夢を見ているように私だけが満たされた。