サッカーと大罪人とお好きな松とヒーローと【短編集】2 (ページ13)

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永久と有限【フェイ】ページ13

とある森の奥にある、大きな古城がありました。

その古城には2本のツノに獣の様な耳
そして無限の時を生きるバケモノが住んでいました。

バケモノは人間を嫌っていました。

何故なら人間は皆、自分を仲間外れにするからです。

別に害を与えるつもりはない。
ただ、仲良くしたいだけなのに。

人間は彼女のツノと、耳を見て口々に言うのです。

『食べられる』

『寄ってくるな』

『殺してやる』

……と。

だからこそ、バケモノの彼女は誰も寄り付かないこの古城に住み始めたのです。

「あの……すみません。誰かいませんか？」

だがある日、古城にお客さんがやって来ました。

その子は幼い少年で、片手にウサギのぬいぐるみを抱いた人間でした。

少年は夜中にも関わらず古城に勝手に侵入したのです。

バケモノはその子を追い払おうと少年の前に姿を現し、低い声で言いました。

「去れ、人間。此処は我が穏所。
今すぐ私の目の前から消えろ」

だが幼い少年は怯える事も驚く事もなく

ぱあっと笑顔を浮かべて、目を輝かせた。

「スゴイ…！綺麗なツノ……」

バケモノは呆気にとられました。

怖がられる事も殺気立たれる事も無く

まさか、散々馬鹿にされたこのツノを見て笑顔になるだなんて。

そして逆にバケモノが驚き戸惑ったが、少年はそんなバケモノに構いなく近付いて、言いました。

「おねーさんも、1人なの？」

「……そう、だが」

バケモノは少年の言葉に戸惑いながらも頷くと

少年は更にニッコリと嬉しそうに笑って、言いました。

「じゃあ一緒だね！
実は僕も1人なの！！」

『一緒』

バケモノはその言葉に惹かれました。

決して一緒にされて嬉しいものではないのに。

その時バケモノは、堪らなく嬉しかったのです。

「僕はフェイって言うの！おねーさんは？」

「……A」

「そっか！Aおねーさんだね！
これからよろしくね！」

「こ…こ、これ、から…？」

「うん！1人は嫌だから、僕おねーさんと一緒に居たいんだ。

………ダメ？」

「…………………好きに、しろ」

こうして少年とバケモノは、一緒に暮らす事になりました。

この日に浮かんでいた満月は、とても綺麗でした。