▼ヘアピン ページ11
A「り、リュゲル…？」
ﾘｭｹﾞﾙ「＿＿＿コレ、」
苦しそうに登場したリュゲルに私だけでなく、紫天王やララヤも驚く中、リュゲルはおもむろに握っていた拳を私の前で開き、その中に入っていた物を見せる。
ソレはヘアピンだった。
しかも綺麗な花の飾り付き。
その花には見覚えがある。
私達が今日貰った花冠の花。
私がリュゲルから貰った花だった。
A「コレ……花冠の……」
ﾘｭｹﾞﾙ「お……お前に、やる」
A「えっ？いいのか？私に？」
ﾘｭｹﾞﾙ「その為に……作った、からな」
A「つく……え？作った？リュゲルが？」
ﾘｭｹﾞﾙ「あ、ああ……」
リュゲルは息も切れ切れに頷くと、私は思わず目を見開き、今一度リュゲルが差し出すソレに目をやった。
力が強いに脳筋だから、こんな器用な事出来るとは思わなかった……
というかコレ、ホントに私貰っちゃっていいのかな…？私がこういうのするのってキャラじゃないっつーか、あんまり似合わなさそうっつーか……
ﾘｭｹﾞﾙ「安心しろ……コレは
A「…えっ？」
ﾘｭｹﾞﾙ「コレは、ちょっとやそっとじゃ壊れない素材でコーティングしてあるんだ。
例え100階から落としてもヒビさえ入らない。
だからもう、飛び出すんじゃないぞ」
いつもと違う、優しい声音。
それこそ、まるで兄のようにそう言いながら、差し出したヘアピンを私に握らせた。
……何それ。また私が屋上から飛び降りるとでも思ってるんだろうか。
だからわざわざ、落としてもグシャグシャにならない花を用意したって事？意味わからん。
私は視線を落として、ヘアピンを見遣る。
あの時、リュゲルから貰ったのと変わらない、とても綺麗な花だ。
コレで前髪を止めたら、あの時リュゲルがあんな顔をした理由がわかるだろうか。
A「………何、それ」
ああ、もうホント。我慢してたっていうのに。
最後の最後でそんな事されたら台無しだよ。
気付いたら私は涙を流していて
私は貰ったヘアピンを胸に抱いて、素直に涙を流した。
そうしたらリュゲル、私の頭を撫でてくれたんだ。
その手があまりにも優しくて、更に涙を流していたら
リュゲルは困ったように笑った。
ﾘｭｹﾞﾙ「……じゃあな、A」
A「じゃあね、リュゲルっ……！」
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