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△リボンが220こ▽ ページ27

一方、真名部とAの方は家に着くまで、どちらも一言も言葉を発さなかった。

ただ手を繋いだまま、お互い目も合わせず歩くだけ。
掌でだけ、ぬくもりを感じるだけ。

ソレは雨が降っても同じだった。


家に帰っても言葉は発さない。
Aはいつも通りに「ただいま」と言ったが
いつもと違って元気が無かった。

真名部は靴を脱いでリビングの方へ向かおうとしたが
玄関を上がった瞬間、ふっ、と真名部の足から力が抜ける。

カクンと膝から床に落ち、真名部はその場に崩れた。
Aは驚いて彼に声を掛けるが、真名部からの返答は無かった。



「……ふっ……ぐっ……ぅ…」



代わりに返ってきたのは、嗚咽。

瞳からはポロポロと涙が溢れ、ポツポツと床に落ちた。


この時の真名部には色んな感情が渦巻いていた。


この選択が正しかったのか、だとか。

Aと一緒にいてもいいのか、だとか。

自分のこと気持ちが純粋なモノなのか、だとか。



真名部も後悔していた。
折角会えた友人達に、あんな冷たい態度を取ってしまった事に。

真名部も後悔していた。
自分のこの気持ちを皆帆に打ち明けてしまった事に。


もう真名部はグシャグシャだった。
どうすればいいのかわからなくて。
これから、どうすればいいのかわからなくて。


一時の感情のせいで。
自分は友人達に酷い事を言ってしまって。
傷付けてしまって。

自分で自分が嫌いになりそうになった。


でも仕方ないじゃないか。
だって彼女に対するこの気持ちを否定されてしまったんだから。

ストックなんとかと言う病気みたいな呼び方で呼ばれて『間違ってる』だなんて言われたんだから。


だが考えれば考える程、そうとしか考えられない自分も確かに存在している。

恐怖を好意とすり替えでもしない限り
自分を誘拐し、5人もの人間を殺した犯人を好きになるはずがないと考えてしまった。


1度考えてしまったら、もうダメだった。

自分で自分を疑ってしまって。
ただただ悲しくなって。虚しくなって。



「……まなべ……」

「っ……う…………ぅぅ……」

「……」




歯を食い縛り、涙を流す真名部。

そんな彼を見て最初は戸惑っていたAも、やがて悲しそうな顔をすると、玄関前に座り込んだ。


そっと真名部の頭を抱き寄せると
真名部は赤子のようにしがみつき、尚も涙を流す。

暫く2人はそのままそこから動かず
Aは真名部が泣き止むまで、ずっと彼の傍にいた。

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*IJu*(プロフ) - あずさん» はじめまして!コメントありがとうございます!一気見するぐらい夢中になって頂けて嬉しいです(´˘`*)お褒めの言葉もありがとうございます、恐縮です…!これからも更新頑張りますー! (2021年2月8日 1時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
あず - はじめまして…!今日このシリーズを見つけて、一気見してしまいました…!!!真名部が少しずつ追い詰められていく様子が細かく描写されていて凄く読み応えがありました…!!本当にすごいです!!これからも応援しております…!! (2021年2月7日 17時) (レス) id: 9c7942e2bb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:*IJu* | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年12月29日 3時

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