リ ボ ン の 檻 5 【真名部陣一郎】

△リボンが241こ▽ ページ48

朝、朝食を簡単に済ませて、Aの勉強を見てやっていた真名部。

小学生が習う漢字が載っているドリルを渡して、文字の読み書きの練習をするAを横目に、いつものチャンネルのいつものテレビのニュースを眺めていると、ソレは流れた。



『稲妻商店街に「通り魔殺人犯」現わる』



そんなテロップと共に流れたのは、昨日皆帆達と争った商店街の路地裏の映像。

昨日までは何でもない路地裏だったのだが
映像では黄色いテープで仕切られ、その向こうでは鑑識の人達が作業していた。

きっと自分達を探す為の手掛かりを探しているのだろう。



『昨日の昼頃、稲妻商店街にて「通り魔殺人事件」及び「真名部陣一郎さん誘拐事件」の犯人と思しき女性の目撃証言がありました。
情報提供者によると「その女性はその時、誘拐されたはずの真名部陣一郎さんと一緒にいた」と証言しましたが、真偽は不明です。
情報提供者は友人と一緒に真名部陣一郎さんの手掛かりを独自に集めていた模様で、警察の方で詳しい調書を取っています。

また、犯人と思しき女性の特徴は背が高く、淡い緑色の髪の毛をして、右頬に大きなガーゼを貼っている、20代前後の女性です。
心当たりのある方、どんなに些細な情報でもお持ちの方は是非警察に御連絡を＿＿＿』



真名部は目を見開いた。
そうして忌々しそうに眉を顰める。


まさか1日でこんなニュースになるとは思いもしなかった。


久々に自分の、しかも今度はAの話題まで取り上げられ、真名部は心底鬱陶しく感じた。

情報提供者は間違いなく皆帆達だろう。
御丁寧にAの特徴まで事細かに伝えてくれて。
これではAももう外に出られなくなってしまったじゃないか。
これ以上、窮屈な思いをして欲しくないのに。


……と、そこまで考えてから真名部は完全に犯人サイドの考えになっている事に気付いて、自分で自分を嘲笑する。


誘拐された本人が、あろう事か事件解決に繋がる情報を見てまず最初に抱く感情が『怒り』とは……

真名部の中ではもう自分はA側の人間だった。


寧ろ、そうしないと自分を保てなくなりそうだった。



「…………」



次のニュースに差し掛かり、真名部はふとAの方を見遣ると、Aはじっとテレビの画面を見ていた。

先程のニュースを見ていたのだろうか。
何を考えているのかわからない濁った瞳で画面に流れる映像を微動だにせず見つめるその姿は、一瞬真名部の胸をざわつかせた。

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