リ ボ ン の 檻【真名部陣一郎】

△リボンが17こ▽ ページ20

結局、真名部は家に電話を掛ける事もなければ、スマホを探し出す事もなく、ましてや玄関から外へ飛び出すような無謀な事もせず。

ただ彼女の闇を垣間見てから、2人は再び元いた部屋に戻った。



「(なんだか……すごく、疲れた…)」



壊れたソファに腰掛けると、真名部は大きな溜息を吐く。

ただ彼女と話していただけだと言うのに、何故だがﾄﾞｯと疲れたような気がした。


この短い間に感情の起伏が激しく変動したのも原因の1つだろうが、何より思考を働かせ過ぎて、脳が疲れてしまったのだろう。

此処に来てから真名部は頭を使いっぱなしだったから。



「(これから、どうすればいいのでしょう……
何をすれば正解なんでしょうか……)」

「だ…大丈夫、まなべ？」



ぐったりとした様子の真名部を心配に思ったのか。

ソファには座らず、でもすぐ傍にいたAは心配そうに顔を覗き込みながら首を傾げた。


内心『こんなに疲れているのは誰のせいだと』とツッコんだが、実際に言う事なんてせず
真名部は一言「大丈夫です」とだけ言うと、また1つ溜息を零した。



「ほ、ほんと…？なんだか、その…疲れてるような感じだけど」

「ええ…でも、少し休めば回復すると思います。
だから放っておいて下さい」



自分で言っといて、内心真名部は笑ってしまう。

少し休めば回復する？
こんな所で気持ちが休まるはずがない。


Aはｵﾛｵﾛと終始困った様な顔をして
何か言おうとしているが、何も言葉が浮かばないのかすぐに口を噤んで。

やがて彼女は「わかった」と小さく呟くと、そっとソファのすぐ横に膝を抱えて座り込んだ。



「何かあったら、私に言って。
……それまではここで大人しくしてるね」

「……はい」



意外にも彼女は自分を放っておいてはくれるらしい。

それだけでも今の真名部にはありがたく、素直に返事を返すとソファの上で膝を抱えた。



「(……このままだと、僕はどうなるんでしょう。
やっぱり、殺されてしまうんでしょうか)」



静かになった部屋の中、真名部は1人考える。

何かされるのかわからない恐怖。
脳裏にはただひたすら、死へのイメージが繰り返される。


ソレはｼﾞﾘｼﾞﾘと迫る壁のように真名部を追い立て、真名部は遂に瞳から涙を零した。



「(助けて……パパ……ママ……)」



そのまま真名部の意識は深い眠りへと落ちていった。

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