花弁が四枚 ページ5
厭だ。怖い。何で、何でこんなに怖いの。今までだってこうやってきた筈なのに。
なんで、なんで?
やだ、やだ、やだ!
でも、お金がないと、あの子は取り戻せない。
一千万、この男はくれると云っている。
一晩だけだ。
たったそれだけ。
だけど、だけど、怖い。
怖い。何が怖いの?
今までと同じことをするだけじゃない。
なのに、なんで、
『自分の身体は大事にしろよ。』
_____嗚呼。
あの言葉だ。
あの言葉のせいだ。
私は男の手を振り払い、店を飛び出す。
走って、走って、走って、もう、何処にいるかもわからなくて。
走り疲れて転んで、座り込んだ。
「うー・・・・」
膝から血が出ていた。
赤い、赤い、血。
初めてのときも、出ていたな。
好きでもない相手。
気持ちいいとか、判らなくて。
あれから、気持ちいいとか、思うことはなくて。
ただ、痛くて。
あの子を想うと、もっと痛くて。
あの子のためにってずっと、ずっと、
なのに、
何で_____!!
「・・・おい、どうした?」
聞き覚えのある、声。
はっと顔を上げた。
「なかはら、さん・・・」
「また何かされたか?あ、おい、怪我してんじゃねぇか。大丈夫か?云っただろ。自分の身体は大事に____」
「五月蝿いっ!!」
「───は?」
「五月蝿い!あんたのせいで!そんなこと云うから!怖くなった!あんたのせいでっ!!」
違う。違う。
中原さんのせいじゃない。ただ、私が弱かっただけ。
こんなの八つ当たりだ。最低だ。なのに止まらない。溢れ出して、止まらない。
「私は何もできなくなった!あの子を取り戻さなくちゃいけないのに!お金が必要なのに!なのに!何でっ!?何であんなこと云うの!?
だいっきらい!あんたなんか、だい────」
次の瞬間、私は中原さんの胸の中にいた。
状況が判断できなくて、戸惑って、どうすれば良いのか、わからなくなって。
「な、なに、」
「・・・・・幾らだ。」
「え、?」
「幾ら必要なんだ?」
それがお金のことだと理解するまで時間がかかった。
「い、一千万・・・・」
「判った。用意する。」
「よ、用意するって、そんな、」
「明日、家で待ってろ。」
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椛 - すみませんコメ欄でパスワードをご教示されないという所を読んでいなくて不躾な質問をしてしまいました。申し訳ございません (2022年3月28日 18時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
椛 - 弱虫彼女の言行録【中原中也】のパスワードをお教えください! (2022年3月28日 17時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
ミント - とても感動しました! (2020年8月17日 21時) (レス) id: ccb520a109 (このIDを非表示/違反報告)
ミント - とても感動しました! (2020年8月17日 21時) (レス) id: ccb520a109 (このIDを非表示/違反報告)
五月雨花火(プロフ) - あぁーもーこの作品す☆き☆これからも頑張って下さい!! (2018年8月19日 22時) (レス) id: c6a781ea39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あも | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/huzisaki5
作成日時:2018年5月22日 20時