花弁が三枚 ページ4
その日はずっと、上の空だった。
と、常連客の方が笑って云った。
「Aちゃんはずっと上の空だね。まるで誰かに恋焦がれているようだよ。」
いやー、妬けるねぇ、とその人は笑った。その隣の女の子が、
「ねぇ!このお花が欲しいわ!」
と、ねだる。
その人はでれっと、顔を緩ませる。
けれど、その女の子は娘ではないらしい。
でも、素敵な父娘に見える。
二人は週に三度、この店に来て、花を買っていってくれる。
とても沢山。嬉しいことだ。
花を受け取る女の子の表情はとても嬉しそうで、こちらも何だか幸せな気分になってくる。
その隣の常連客の顔は目も当てられないくらいだけど。
「誰か、想い人でも出来たのかい?」
「へっ!?い、いえいえ!そんな!想い人だなんてっ・・・!」
もごもごと口ごもると、常連客はふふっと笑う。
「わ、笑わないでくださいよ!」
「嗚呼、済まないね。何だか可愛らしくてね。」
「リンタロウ!もう行きましょう!」
「嗚呼!待って、エリスちゃん!」
常連客は行ってしまった。
本当に親子じゃないのかな?
でも、エリスちゃんが全力で否定していた。
こんなのが父親だなんて厭!!って。
あの時は本気で泣いてたなぁ。
なんてことを考えながら私は接客を続けた。
×××
もう、店じまい、という時間。
一人のお客が来た。
「いらっしゃいま・・・」
その客の顔を見て、私は目を見開いた。
と同時に、さぁっと血の気が引いていく。
昨日の男だ。
「やぁ、昨日の続きをしようじゃないか。」
男に腕を捕まれる。恐怖が、頭のなかを駆け巡る。
「あっ、や、やめっ・・・!」
「どうして?金が欲しいんだろう?幾らでもあげよう。幾ら欲しいんだい?」
「っ・・・・・い、一千万、でも、貴方なんかにっ・・・!!」
「一千万か。良いよ。用意してあげよう。一晩付き合ってくれたら良いんだよ。安いもんじゃないか。」
「っ・・・・!!」
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椛 - すみませんコメ欄でパスワードをご教示されないという所を読んでいなくて不躾な質問をしてしまいました。申し訳ございません (2022年3月28日 18時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
椛 - 弱虫彼女の言行録【中原中也】のパスワードをお教えください! (2022年3月28日 17時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
ミント - とても感動しました! (2020年8月17日 21時) (レス) id: ccb520a109 (このIDを非表示/違反報告)
ミント - とても感動しました! (2020年8月17日 21時) (レス) id: ccb520a109 (このIDを非表示/違反報告)
五月雨花火(プロフ) - あぁーもーこの作品す☆き☆これからも頑張って下さい!! (2018年8月19日 22時) (レス) id: c6a781ea39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あも | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/huzisaki5
作成日時:2018年5月22日 20時