忠義の程は……Ⅰ【あんスタ】 (ページ9)

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7.ライブ　※過激表現含む　ページ9

　
　
　
　
「ほんま，人多いなぁ………」
　
ライブ開始予定時刻の10分前。すでに満員となったライブ会場では，がやがやと人の声が響いていた。真っ暗なステージ。そこに現れる二人のアイドルをたくさんの人が待ち望んでいた。
　
　
ー皆さんお待ちかねの，snowfallクリスマスライブをただいまより開始しますー
　
ー今回のMCは，僕達fineが担当するよ♪皆楽しんでいってね～！ー
　
　
「む，桃李くんがMC…」
　
fineといえばスタプロ所属のESビック4のあのユニットか……今のえらく高い可愛い声はfineのピンク髪，姫宮桃李……ずるい，自分だってAのライブMCしたい，というのが今のこはくの心情。
　
　
ーお待たせいたしました。それでは，snowfallのお二人の登場です！ー
　
大きな歓声とともに，これまで真っ暗だった舞台の照明が一気についた。ステージの真ん中に佇む二人の人物。下を向いているため顔は見えないが，水色と白いレースがあしらわれた可憐なユニット衣装をはためかせ，朱色の長い髪をたなびかせている人物は，こはくがよく知る人物であった。
　
「嬢……」
　
「ふふん，綺麗でしょう。さすが私のsisterですね♪」
　
隣にならぶ羽風涼と片手を上げる動きをシンクロさせ，そのまま歌い出しに入る。一気に照明が強くなった。昔，大人には見せずに，こはくや司にだけ見せた無邪気な子供の笑顔を，今は観客へ向け，高らかな声で歌い続けるAの姿。こはくは，Aに釘付けになっていた。
　
(なんで，なんでそないな顔を……)
　
「とても楽しそうに歌いますね。私もknightsのお兄様と一緒に舞台に立つことはとても光栄で嬉しい事ですが」
　
「あ，あぁ，まあな……燐音はんらと一緒に歌うのも楽しいけど……やな………」
　
あの顔は，自分だけが知っている物だった。なのに，なのに今彼女は……
　

「不特定多数の豚どもに"ご当主の妹はん"が姿見せる事あらへんのに…」
　
「なにか，言いましたか？こはくん」
　
「いや，何も」
　
小さい声でポツリ。今の発言が周りに聞こえてしまっては困る。幸い，隣の司には聞こえなかったようだ。
　
「嬢も，坊も，わしが守るもんやのに…………いっつも隣にいる奴はわしやない………坊の隣にはあのknightsの先輩たちが，そんで，嬢には………………涼はん………わしは，何のために，アイドル…に………」