忠義の程は……Ⅰ【あんスタ】 (ページ7)

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5.影片みか生誕祭ページ7

12/26 Happy Birthday みかちゃん
　
　
　
　
　
「影片さん，お誕生日おめでとうございます」
　
「Aちゃん，ありがとうなぁ」
　

コズプロ事務所へと続く廊下で，Aはコズプロ所属Valkyrieの影片みかを待っていた。遠くから近づいてくる彼の気配を感じて急いで振り返ると，髪や服を軽く叩いて身なりを整える。
　
スーっと息をはいて一度気持ちを落ち着かせると「影片さん」と名前を呼んだ。自分で思ったよりも大きい声が出ていたようで，呼ばれた方はビクリと大きく肩を揺らした。
　

「おれの誕生日なんか覚えてくれてたん？嬉しいわぁ」
　
同じ地方の方言であるのにこうも印象が違うのは何故だろうか。恐らく，彼の柔らかな印象と間延びした喋り方によるのだろう。Aは，どっかの桜髪の少年も，同じ事務所のこの穏やかな先輩を少しは見習ってほしいと心の中で溜息をついた。
　
「あれ，嬢か？こんなところで何やってるん？」
　
「あら，こはくんじゃないですか。今影片さんの誕生日を祝いに来てましてね……。どっかの誰かさんも，影片さんのように穏やかで優しい印象の関西弁は使えないものかと……」
　
「それ絶対わしのことやん」
　
関西弁を使っているES有名(色んな意味で)アイドルと言えば，影片みかと桜河こはくである。ここで，Aが示している「どっかの誰かさん」とは確実にこはくのことであると本人も容易に推測できた。
　
「まあまあ，こはくくんはその関西弁が『こはくくんらしさ』やからね。ちょーっとキツイ気もするけど……」
　
「みかはんは優しいなぁ。どっかの誰かさんとは大違いやわ」
　
Aは，キッとこはくを睨むが彼は全く気にしていない様子でそっぽを向いてしまった。
　
「あ，あはは……そや！今日なぁ，おれの誕生日やからって副所長さんがケーキくれてん！でもおっきくて一人じゃ食べれへんから，二人とも一緒に食べへん？」
　
甘い物に弱い二人。Aの方はケーキを聞くだけで頭の中にあまーいクリームと苺ののったケーキを思い浮かべ満面の笑みになった。
　
「是非！ご一緒させてください！」
　
「じょ，嬢がいくなら……」
　
「へへ，よかったぁ。ほな，入って入って～」
　
そういってみかが手招きしたのはコズプロ事務所の中。Aは一瞬「別の事務所に入っていいのか？」と考えたが，そんな考えはケーキで一気に掻き消されてしまった。この後，スタプロ代表の英智と，コズプロ副所長茨が裏で喧嘩していたことを，彼ら3人は知らない。