待て ページ5
部室の戸締りがちゃんと出来ているかを確認し鍵を職員室まで返しに行くのが今日のAの当番。
職員室へと続く道を夜ご飯のことを考えながら歩いていた。
『ハンバーグだったら泣く。嬉しすぎて』
-ピロリン♪-
着信音が鳴った
相手はAの母からだ
[今日はハンバーグです。気をつけて早く帰っておいで。]
『しんどい…ほんま嬉しい。早く鍵届けよ』
いつもより早足で足を進める
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『失礼しました。……あ…』
鍵を届け職員室を後にしようと踵を返したときAは何かに気づいた
『あれって確か………
ねえ!君!えーっと……キセキの世代の!!』
Aは校舎の外にいる人物に声をかけた
するとその人物はこちらを見た
だが、まさか校舎の中から声をかけられているとは思わず辺りを見渡す
それもそう、今は21時半。生徒がこんな時間にいるはずない、気のせいだと思った
『あ、待ってて!すぐそっち行く!』
Aは荷物を担ぎ直し下駄箱へと急ぐ
『はぁ…はぁ…はぁ………っあ〜しんどい
って、あれ、いないや』
--帰っちゃったのかな--
「ここですよ」
『ふあっ!?……どこにいたの』
後ろを振り返ると先程呼び止めていた"キセキの世代"がそこに居た
「飲み切ったコーヒーの缶を捨てに行ってたんです」
『あ、そうなんだね』
「それで、僕に何か用でも?」
『ううん、これと言って用はないんだよね。ただ、君バスケ部でしょ?私そこのマネやってるんだけど、今日来れなくなったっていうの聞いてたから。…あ……えーと、ごめんね。話しかけたのはいいけど話続かないや。また明日部活でね』
無表情で顔色ひとつ変えない相手にAは何を話しているのだろう、と我に返った
面白い話が出来るわけでもなく、今日生徒会の仕事で部活に来れなくなったという理由があり、どんな人なのかという興味が湧いた為話しかけただけなのだ
--早く帰ろ。ハンバーグが待ってる--
Aはその場を立ち去ろうと踵を返す
「待て」
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作者名:蛍 | 作成日時:2019年10月18日 20時