手、少し痛いかな ページ35
「あーあー、いいなーいいなー」
体育館を出て部室の戸締りなどを終えたAが合流した時からずっとこの調子の葉山
『……玲央、小太郎どうしたの』
「あー、それがね？Aが茉琴や1年生と行くのが羨ましいんだって。全く子供よね」
「いいなぁ。マジでいいなぁ。俺もAとどっか行きたいなぁ」
--あ、私と？--
実渕の話し方的に茉琴や1年生と出かけるのが羨ましいと捉えていたA
『今度どっか行く？小太郎』
「え！いいの！？行く行くー！」
『っもう…！！いちいち抱きつくなっ！！！』
「んあああああああ！」
『っはぁ！？？！なんで強くなってんの！？ちょ、死ぬ！無理！永吉たすけ…』
「小太郎、放してやれ」
しばらくの沈黙の後我に帰った小太郎はAを放した
「お？お、おー、わりぃA！嬉しすぎて力加減間違えた」
今までのやりとりを眺めていた赤司がやっと口を開き小太郎にAを放すよう促した
『…っあー……力強いバカ！肋折れるかと思った！』
「わぁー！ごめんってばA！」
『あー気持ち悪い…茉琴と言い小太郎と言い…殺す気か』
「まあまあ、それほどAのことが好きってことよ」
「A」
『あ"？』
まだ息を整えきれていないAは赤司の呼びかけに乱暴に答えてしまった
『あ…ごめ、乱暴に返事しちゃった。
どうした？』
「送っていくよ、行こう」
『え、ああ、うん。ありがとう』
咄嗟のことで断れず、さすがに毎日送ってもらうのはとAは気が引けていた
「ちょうどここでみんな分れるしな！じゃあまた明日なー！赤司、Aー！」
『うんまたね小太郎、玲央、永吉』
「おう！気ぃつけて帰れよ！」
「征ちゃんAをよろしくね」
「あぁ。行こうA」
手を引かれて帰路を歩く赤司
その顔はいつもより無表情だった
『赤司？』
「…」
『赤司ってば』
「…なんだい？」
『手、少し痛いかな』
「あぁ、すまない」
少し力は緩められたものの放す気配はなかった
結局家の前まで送ってもらったA
「それじゃあ僕は行くよ。おやすみ」
あの後ずっと無言のままだった。
赤司は何故握る手が強かったのかAは気になった
『赤司、なんかあった？』
「何かとは？」
『今日、なんか違う雰囲気だから』
「………。なんでもないよ、すまない」
『そっか。
おやすみ、気をつけて』
見送る背中はとても寂しそうに見えた
『…っ』
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作者名：蛍 | 作成日時：2019年10月18日 20時
