【完】One Knight / KnightA + Y (ページ4)

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　帰る家も正直なくなった。半同棲と言う形で彼氏の家に半年前からお邪魔してる。元々実家暮らしだった私は、家を開けることが多くなってから両親に「好きな人と一緒に暮らしてもいいんだよ」と優しい言葉をかけてもらえた。優しく送り出されてから半年、実の娘が泣いて帰ってくるなんて思ってもないんだろうな。

「……少し、おめめ充血してる。久しぶりに泣いちゃった？」
「あ、えっと。はい、……その、嫌ことがあって」
「うん、そっか。泣くとストレスが少し無くなるんだってー。だから悪いことじゃないよ。嫌なことは、涙で全部流しちゃおっ」

　綺麗な笑顔。優しくって包み込まれるその笑顔にちょっときゅんとしながら笑ってみせる。この心配性な人が安心するためにも早く泣くのやめなくちゃ。

　貰った水にいただきますをして一口飲む。もしかしたら今日初めて口にしたんじゃないかと言うくらい立ち止まって休憩をするのは久しぶりだった。朝からバタバタしてて、ご飯も食べる時間なかったからな……。

　そこまで思った時、そういえば目の前のこの人は一緒にいてくれるんだと疑問が出てきた。紺色の高級感のあるシャツに派手な水色のカラースーツ。普通の会社員じゃないことは分かるが、こんなお洒落をして家に帰宅する所というわけではなさそう。

「……あっ、あの何処かに行く予定だったんじゃ……、」
「あー……えっと実はまだ仕事中でー」
「えっ！？」

　あははっ、なんて笑っているが笑ってる場合じゃないでしょっ。というか私のせいで……！

　勢いよく立ち上がって頭を下げようとした時「大丈夫だよー」と気の抜けた甘ったるいソーダみたいな声が返ってきた。

「丁度客引きしてる最中だったし、息抜きに外出てきたって感じなんだ。だから気にしなくて大丈夫。君が一人で泣いちゃってるのがほっとけなかったんだもん」
「……っ、あの……客引きって、なんの、」
「あぁ、ホストだよ。近くにお店があるんだー」
「行きます……っ」
「え」

　そりゃそうか。カラースーツにネオン街。こんなにイケメンだったらすぐに分かった事だ。ホストだって。

　全然ホストになんて興味はないけれど、私のせいでこの人の稼ぎが悪くなっては困る。それなら私が客として店に行けばこの人の今の時間は無駄にはならない。だって『客引き』をしていたんだから。