6 衝動のままに〈リヴァイside〉 ページ6
以前と変わらない澄んだ眼差しで、自分の事を知っているのかと聞いてくるユズア。
時折見せる微笑みが眩しすぎて、直視出来ずに思わず手で顔を覆ってしまった。
ユズアはあの頃のまま、俺の心臓を捉え心を揺さぶり、全身に熱を持たせるほど可愛らしい。
まさか…ッ
既に他に男が居たりしねぇだろうな…ッ!?
そんなガキみたいな焦燥に襲われた。
「…あぁ。よく、知っている…昔からな…」
会うのは2回目な上に、前世の記憶が無いコイツとは何の接点も持っていない。
ユズアの好奇心を俺に繋ぎ止めるために、敢えて含んだ言い方をした。
今も昔も相変わらず大人気ねぇな俺は…。
ユズアの事になると、全くと言っていい程余裕が無くなる。
『…どうして…貴方に会ったのは、この前が初めてなのに…』
ほとんど呟きに近い「あゆな」の声。
夢で見たまま、リズミカルで鈴が鳴るように愛らしいのに凛としている。
――クソッ…抱きしめてぇ…ッ!
突然、頂点まで募る衝動を抑えるのに、一瞬で相当な労力を要した。
「知りたいか…?」
『…それは…ッ…知りたい…です…』
戸惑いながらも意思の強い瞳。
あゆなが放つ言葉も仕草も全て、在りし日のユズアの面影を宿していて、湧き上がる衝動にどうにも抗えない。
「なら…試してみるか…?」
『…え?…』
今、目の前に想い焦がれて止まない女が居るんだ。
ずっと探していた大切な存在が…。
我慢できる男なんていねぇだろ、普通。
そんな言い訳を胸の内に秘めて、数メートル先に佇む、あゆなへと歩みを進める。
あゆなは、ほんの少し怯えた表情を浮かべながらも、その場を動かなかった。
数秒で距離は縮まり、俺は
柔らかく温かな感触に、理性が曖昧になる。
甘い香りが鼻先をくすぐり、数々の過去の記憶の断片が脳裏を
なのにあゆなは抵抗せずに、ピクリとも動かない。
「…おい、平気か…」
そうさせたのは自分なのに、逆に心配になり、つい問いかけた。
『…は…い…。…あの…これは…どういう…』
一体何が起こったのか、瞬時に理解が出来なかったようだ。
そりゃそうだろうな…。
一回会っただけの男に抱きしめられてるんだ。
だとしても何故コイツは抵抗しねぇんだ。
やはり、奥底深くにはあの頃の記憶が潜んでいるんだろうか…。
「俺は…ずっと…お前を探していた…」
駆け引きも何も必要ねぇ。
素直な想いを、あゆなを抱きしめる腕に力を込めて伝えた。
*
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作者名:夢梨 | 作成日時:2018年11月4日 15時