13 忘れもの〈リヴァイside〉 ページ13
「…これは…?」
国内線フライト後の休みを利用して街で買い物をし、あの海へ行こうと考えていた。
車に乗り込み、即座にかけたエンジンの小刻みな揺れに連動して、視界の左端にキラリと光るものが映る。
そんな光るようなものがあったかと不思議に思い、助手席の足元を覗き込んだ。
左手の指でそっとつまんで拾い、目の高さまで上げたソレは完全に俺のものではない、キラキラとヒモ状に連なった女物のブレスレッドのようなアクセサリーだった。
最近、買い替えたこの車に乗せた女は、あゆなだけだ。
「あゆな…の…物か…?」
思いがけず、あゆなに会いに行く自然な口実が出来た。
つい、頬が緩む。
単純だな…俺は…。
予定を変更し、買い物の後、あゆなの家へ向かうことにした。
ギアをドライブに入れ、サイドブレーキを外そうとした瞬間、突然助手席のドアが開き、女が乗り込んできた。
「てめぇ…いきなり危ねぇじゃねぇか」
「だって…理人、全然私の話聞いてくれないじゃない。最近特に」
「聞く必要あるか?」
「もう…いいから
「…チッ…俺は用事があるんだ。駅に着いたら絶対降りろよ」
「…わかったわよ。だけど、一度でいいから私の話を聞いて」
「…あぁ…なら、さっさと話せ。手短にな」
「もう…本当、冷たいんだから…」
悲し気な表情で小さくため息を吐いた
何なんだ一体…。
俺は今、ユズア…あゆなの事で頭がいっぱいで、他の女の事なんか考えてられねぇんだが。
「お前が自分で招いた事態だろう」
エルヴィンの言葉が頭の中に響いた。
だよな…。
わかってんだ、ケリをつけなきゃならねぇ事くらい。
凛花が俺に想いを寄せていて、身体の関係を持つことで、俺の気持ちを自分に向けさせようとしていた事も。
それら全てをわかった上で俺は…。
ユズアを見つけられねぇ苛立ちを消す為だけに凛花を利用した、最低な行為だと自覚している。
「これ…アンクレットね。どうしたの…?」
「アンクレット?」
凛花が、さっき拾ったアクセサリーを持ち上げた。
突然の凛花の登場で咄嗟に、オープンにしていたカップホルダーの横の小物入れに入れていたようだ。
「そうよ、これは足首につけるアクセサリー。もしかして…これの持ち主のせいかしら。貴方が最近更に冷たくなったのは」
俺を覗き込むように首を傾げた凛花は、含んだ笑みを浮かべ、嬉しそうだった。
*
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作者名:夢梨 | 作成日時:2018年11月4日 15時