＊＊＊ ページ9
*
「今日も研究ですか? 薬研」
「ああ、ちょっとな……」
花一匁をみんなでやった日から、一年ほど経った。
薬研はあの日の夜から、ずっと研究だと云って一室に閉じこもり、食事の席にも現れなくなった。
一応彼は神様だし、本体は刀剣なので、必ずしも食べる必要はないのだが、「やっぱり、折角作ったのに食べて貰えないのは残念だな」と燭台切が云うので、私は彼の部屋へ食事を運んでいた。
……もっとも、半分くらいは残っていて、いち兄がやれやれと云いつつ食べてしまうのだが。
彼があれだけ熱中して研究しているのは、例の薬についてだ。
変若水……父様が遺した資料を基に、試しに作ってみたりもしたそうだが――。
――大将、ありゃあ変だぜ。
人間が作れる
――それは、どういう……?
――何つーかなあ……まだちょっと整理がつかんが、人間が手に入れられる材料だけじゃ作れんってのは確かだぜ。
人外的な薬で人外的存在を作り出す――雪村さんは、人を救う蘭方医ではなかったか。
千鶴には云うんじゃねえぞという彼の言葉に従い、私は千鶴に疑惑追及をしたりはしなかった。
その日の未の時分、千鶴が私を訪ねて来た。
聞けば、幕命で京に行った雪村さんからの連絡が途絶えてから半年以上が過ぎていて、安否が心配なので、京へ行ってみようと思っているとのこと。
彼女は、留守を頼みに来たのだ。
「千鶴……今の京は治安が悪い。
「分かってる……でも、心配なの。毎日手紙を下さってたのに……」
☆註釈☆
※未の時分：昼の二時頃。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 114人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Chris(プロフ) - 魔導士カリナさん» コメントありがとうございます! 文体好きって言って貰えてすごく嬉しいです。応援……?! もうありがとうございますの一言に尽きます……。 (2017年4月3日 7時) (
レス) id: 2c836ec423 (このIDを非表示/違反報告)
魔導士カリナ(プロフ) - Chrisさん！イベント参加、ありがとうございました！私が言って良いのか分かりませんが...私、Chrisさんの文体とか凄く好きなんです。もしよろしければ、これからも作品を応援させていただいて宜しいでしょうか...？ (2017年4月2日 23時) (レス) id: 0cf79671fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
