＊＊＊ ページ7
*
「あるじさま! いつまでもしずみこんでいては、おからだにさわりますよ!」
父様が亡くなったことでずっと気が滅入っていた私を心配した今剣が、私を遊びに誘ってくれた。
父様が亡くなってからは、私が刀剣の主となった。
そのことによって、私は名前を呼んで貰えなくなった。
今剣は「あるじさま」と呼び、薬研を初め一部の粟田口の短刀たちは「大将」と呼ぶようになった。
粟田口唯一の太刀、一期一振は「主殿」と呼ぶ。
鶴丸や三日月は、「主」と呼ぶ。
他にも、「あるじさん」、「主君」など、様々だ。
……名前を呼んで貰えないのは、距離が遠くなったようで何だか悲しかったけれど、へし切長谷部に「我々は主の真名を預かっていますから」と云われて、諦めざるを得ないことを悟った。
ちなみに長谷部は、織田信長の打刀だったらしい。
「あー、あるじさん来たよ!」
今剣が私を引っ張って連れて来たのは、家の前の少し開けた処だった。
粟田口の短刀、乱藤四郎が真っ先に声を上げた。
「主さん、今剣さん、早く早くー!」
そう云ったのは、粟田口の脇差、鯰尾藤四郎だ。
「みんなで花一匁をやるんだとよ」
薬研が云った。
粟田口が中心になって決めたところによると、甲乙に別れてやるらしい。
甲組は私、今剣、鳴狐、鯰尾、前田藤四郎、五虎退、薬研藤四郎、蛍丸、小夜左文字。
乙組は骨喰藤四郎、平野藤四郎、厚藤四郎、後藤藤四郎、秋田藤四郎、乱藤四郎、包丁藤四郎、愛染国俊、獅子王。
三日月、小狐丸、岩融、石切丸、いち兄(と私は一期一振のことを呼んでいる)、明石国行、江雪左文字、宗三左文字、鶴丸は見物に回るそうだ。
どうせなら参加すればいいのに……と思ったけれど、如何やら見ているだけでも楽しいらしい。
というより、弟たちが遊んでいるのを見るのが目的という者が中心だろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 114人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Chris(プロフ) - 魔導士カリナさん» コメントありがとうございます! 文体好きって言って貰えてすごく嬉しいです。応援……?! もうありがとうございますの一言に尽きます……。 (2017年4月3日 7時) (
レス) id: 2c836ec423 (このIDを非表示/違反報告)
魔導士カリナ(プロフ) - Chrisさん！イベント参加、ありがとうございました！私が言って良いのか分かりませんが...私、Chrisさんの文体とか凄く好きなんです。もしよろしければ、これからも作品を応援させていただいて宜しいでしょうか...？ (2017年4月2日 23時) (レス) id: 0cf79671fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
