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「更科家は、そういう家系でな。代々更科の血を引く者はみな、俺たち刀剣の付喪神と愛称が良い。だからこそ俺たちは、この家の人間を、特に子供を守るために、愛情を注ぐという方法で働いてきた」
薬研が云った。
「三条、五条、来、粟田口……いろんなとうはのかたなが、更科のいえにはつたわっているんです。せんらんのなかやけたかたなも、このいえにつくもがみとしていまいちどのせいをうけます」
今剣は、少し遠い眼をしながら語った。
きっと彼の眼は今、はるか昔の義経公との想い出を眺めているのだろう。
「私たちの本家は、更科というところにあるんだ。そこには小さな祠があって、刀剣たちはそこに生を受ける。私は更科に行っては、祠の刀剣を回収し、状態維持のための資材を集めていたんだよ」
――正直、すぐに飲み込める内容ではなかった。
疑問はたくさんあったけれど、そもそも自分が何を分かっていないのかすらも分からなかった。
私は、静かに頭を下げた。
「父様、申し訳ございませんが……良く分かりません」
「そうかい……Aにはちょっと早かったかな」
父様は、いつもと変わらぬ優しい笑顔でそう仰ってから、水を欲しがられた。
薬研が汲んできて、父様に渡した。
一口飲むと、父様は疲れたと仰って、眼を閉じた。
その日の、ちょうど子の刻のことだった。
父様は、お隠れになってしまった。
☆註釈☆
※子の刻:夜十二時頃。
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Chris(プロフ) - 魔導士カリナさん» コメントありがとうございます! 文体好きって言って貰えてすごく嬉しいです。応援……?! もうありがとうございますの一言に尽きます……。 (2017年4月3日 7時) (レス) id: 2c836ec423 (このIDを非表示/違反報告)
魔導士カリナ(プロフ) - Chrisさん!イベント参加、ありがとうございました!私が言って良いのか分かりませんが...私、Chrisさんの文体とか凄く好きなんです。もしよろしければ、これからも作品を応援させていただいて宜しいでしょうか...? (2017年4月2日 23時) (レス) id: 0cf79671fa (このIDを非表示/違反報告)
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