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それぞれに楽しんでいる刀剣たちをうっちゃり、私は平助さんと話していた。
その時突然、広間に井上さんが入って来た。
「ちょっといいかい、みんな」
その言葉で、和やかだった場の空気が一気に硬くなる。
「大阪にいるトシさんから手紙が届いたんだが、山南さんが隊務中に重傷を負ったらしい」
「何があったの?」と沖田さん。
「ああ……二人が訪ねる大阪の呉服屋に浪士たちが無理矢理押し入ったらしい。駆けつけたトシさんと山南さんが、何とか浪士たちを退けたらしいが、その時に斬られたそうなんだ」
「それで、山南さんは……?!」と千鶴。
「相当の深手だと手紙に書いてあるけれど、傷は左腕とのことだ。剣を握るのは難しいみたいだが、命に別状はないそうだよ」
それを聞いた千鶴は「良かった……!」と安堵の声を出したが、私たちの心は暗かった。
刀を片手で扱うのは難しいからだ。
近藤さんと話があるからと、井上さんは去っていった。
斎藤さんが暗い顔で口を開いた。
「剣を握れないほどの深手か……。腕の筋まで断たれているかもしれん」
そして、最悪真剣は振るえまい――と。
片腕で刀を扱うと、その分威力が弱まる。
鍔迫り合いになれば、確実に負けてしまう。
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Chris(プロフ) - 魔導士カリナさん» コメントありがとうございます! 文体好きって言って貰えてすごく嬉しいです。応援……?! もうありがとうございますの一言に尽きます……。 (2017年4月3日 7時) (レス) id: 2c836ec423 (このIDを非表示/違反報告)
魔導士カリナ(プロフ) - Chrisさん!イベント参加、ありがとうございました!私が言って良いのか分かりませんが...私、Chrisさんの文体とか凄く好きなんです。もしよろしければ、これからも作品を応援させていただいて宜しいでしょうか...? (2017年4月2日 23時) (レス) id: 0cf79671fa (このIDを非表示/違反報告)
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