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「二人とも良かったね。これからはよろしく頼むよ」
井上さんが云ってくれた。
私たちも、よろしくお願いしますと云った。
「なあ、源さん。女子となれば、ここのような男所帯では申し訳ない気もするんだが……」
「ええ。そうですねえ。これはちょっと困りましたな……」
近藤さんの言葉に、井上さんも考え込んだ。
確かにそうかも知れない。
私は、物心ついた頃から父様と刀剣たちと暮らしてきたから、男所帯の方が馴染みやすいのだけれど……千鶴はどうなのだろうか。
斎藤さんが口を開く。
「不便があれば云うといい。その都度、可能な範囲で対処しよう」
千鶴がお礼を云った。
「ま、まあ、女の子となりゃあ、手厚くもてなさんといかんよな!」と"新八っつぁん"。
「新八っつぁん、女の子に弱いもんなあ……。でも、だからって手のひら返すの早すぎ」と藤堂さん。
私もそれには賛成だった。
「いいじゃねえか。これで屯所が華やかになると思えば、新八に限らず、はしゃぎたくもなるだろ」と"左之さん"。
千鶴はともかくも、私が華やかに出来るのだろうか……。
「とはいえ、彼女らをここで女性として扱うのは難しそうです」と山南さんが云った。
「刀剣たちはともかく、彼女らを隊士として扱うのもまた問題ですし、処遇は少し考えなければなりませんね」
「なら、誰かの小姓にすればいいだろ?」と土方さん。
「近藤さんとか山南さんとか――」
すると、「やだなあ、土方さん。そういう時は、云い出しっぺが責任取らなくちゃ」と沖田さんが云い、「ああ、そうだな。トシの傍なら安心だ!」と近藤さんが云った。
「そういうことで土方くん。彼女らのこと、よろしくお願いしますね」
「……てめぇら、勝手に決めてんじゃねえ!」
土方さんは少し怒ったように云ったけれど、何はともあれ、如何やら居所が出来たようだ。
――良かったね、みんな!
――ばぁか、聞こえねえよ、あいつらには。
――いいじゃんいいじゃん。
このくらい喜ぼうよ、兼さん。
それに兼さんは、あの子たちと一番長くいることになるんじゃない?
いーなー。
――おい、そりゃあ国広もだぞ。
なあ?
――そうだね、兼さん。
ふふ、楽しみだなあ。
また聞こえた、楽し気な会話。
一人は堀川国広と云うのか。
それから、加州と兼さん。
物吉の幸運の力は、思ったよりも強いらしかった。
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Chris(プロフ) - 魔導士カリナさん» コメントありがとうございます! 文体好きって言って貰えてすごく嬉しいです。応援……?! もうありがとうございますの一言に尽きます……。 (2017年4月3日 7時) (レス) id: 2c836ec423 (このIDを非表示/違反報告)
魔導士カリナ(プロフ) - Chrisさん!イベント参加、ありがとうございました!私が言って良いのか分かりませんが...私、Chrisさんの文体とか凄く好きなんです。もしよろしければ、これからも作品を応援させていただいて宜しいでしょうか...? (2017年4月2日 23時) (レス) id: 0cf79671fa (このIDを非表示/違反報告)
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