文久三年十二月 新撰組 ページ21
*
数日越しの屋内での眼醒め。
「んー……」
畳の匂い……天井……襖……。
「……あれ?」
朝の光が照らし出したのは、見慣れない部屋だった。
昨夜のことが一挙に思い出される。
身体の自由が利かないなと思って見下ろすと、縄でぐるぐる巻きにされている。
鶴丸も骨喰も近くにはなく、ましてや人の姿を見られていた薬研は論外だ。
驚いたことに、懐に入れたままのはずだった今剣すらもいない。
せめて一振りでも、近くにいてくれたら気が楽なのに。
ここは、昨夜私と千鶴と刀剣たちが引きずられるようにして連れて来られた屯所。
そこが、【新撰組】の本拠地だそうだ。
そもそも私は、新撰組とは何ぞからなのだが、聞ける雰囲気ではなかったので諦めた。
きっと、千鶴も薬研も別室で縛られているのだろう。
そう思いながら、ぼんやりと天井の染みの数を数え始めた、丁度その時。
襖が開いて、一人の男性が入ってきた。
「眼が醒めたかい。……この子にもこんなに縛ったのか。ごめんよ、こんな扱いで」
そう云って、その人は手を縛る縄を除く全てをほどいてくれた。
「貴方は……?」
「私はね、井上源三郎というんだ」
「井上さん……」
私が繰り返すように云うと、井上さんは立ち上がった。
「さて、ちょっと来てくれるかね。今朝から幹部連中があんたら三人について話し合っているんだが……昨夜、あんたらが何を見たのか、確かめておきたいってことになってね」
「何を……ですか」
羅刹のことか。
「分かりました……」
私は、井上さんについて部屋を出た。
大丈夫、ただ正直に云えばいいだけだ。
そう云い聞かせても、膝が震えてしまう。
「心配しなくても大丈夫さ。なりは怖いが、気のいい者たちばかりだよ。一番歳の若い藤堂くんは、もう一人の一つ結びの子よりちょっと年上くらいだよ」
もう一人の一つ結びの子――千鶴のことか。
「それに、永倉くんと原田くんという賑やかな二人組もいるから大丈夫」
「あの……幹部情報駄々漏れですけれど、いいのでしょうか……?」
流石の私も、ここで口を挟んだ。
いくら何でも、これは不用心にもほどがある。
「……あ」
あじゃないですよ……。
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Chris(プロフ) - 魔導士カリナさん» コメントありがとうございます! 文体好きって言って貰えてすごく嬉しいです。応援……?! もうありがとうございますの一言に尽きます……。 (2017年4月3日 7時) (
レス) id: 2c836ec423 (このIDを非表示/違反報告)
魔導士カリナ(プロフ) - Chrisさん！イベント参加、ありがとうございました！私が言って良いのか分かりませんが...私、Chrisさんの文体とか凄く好きなんです。もしよろしければ、これからも作品を応援させていただいて宜しいでしょうか...？ (2017年4月2日 23時) (レス) id: 0cf79671fa (このIDを非表示/違反報告)
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