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一くんとやらは、衝撃を受けたように眼を見開いていた。
土方さんは、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「わ、私もおかしいかなとは思いました! でも、この人がお礼を云えと――」
遂に薬研が吹き出した。
――あっははは……こいつは驚きだな!
鶴丸も爆笑している。
ふと見ると、云った当人までもが腹を抱えて笑っていた。
夜の暗い路地裏に、笑い声が響いた。
「あ。……ごめんごめん。そうだよね、僕が云ったんだもんね」
ひとしきり笑った彼は、少しだけ姿勢を正して千鶴に向き直った。
「どう致しまして。僕は
「ご丁寧に、どうも……」
千鶴がもう一度頭を下げた。
私はしゃがんだまま、微動だにせずにいた。
「君たちを助けてくれたのが
「……わざわざ紹介してんじゃねえよ」
遂に土方さんが遮った。
「副長。お気持ちは分かりますが、まず移動を」
斎藤さんが、再び移動を促した。
沖田さんは千鶴の手首をつかむと、そのままの笑顔で歩き始める。
「あっ、A……」
千鶴が慌てたように、私に手を伸べたが、届かなかった。
土方さんが薬研を引っ張り、薬研が私を引っ張った。
「己のために最悪を想定しておけ。……さして良いようには転ばない」
薬研がふっと笑った。
彼の最悪は、死ではなく、『破壊』だから。
――堀川、どう思う?
俺的には生きてくれると嬉しいんだけど。
ふと、声がした。
――どうって……どうだろうね。
兼さん、どう思う?
――オレに振るなって……。
それきり、何も聞こえなかった。
三日月、新しい出会いはありましたよ。
物吉、貴方の幸運の力は、今宵の命を救ってくれました。
白く輝く、狂い咲きの桜の花びらのような月明かりの下。
江戸から来た二人の少女は、新たな人、そして新たな刀剣たちと出会ったのだった。
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Chris(プロフ) - 魔導士カリナさん» コメントありがとうございます! 文体好きって言って貰えてすごく嬉しいです。応援……?! もうありがとうございますの一言に尽きます……。 (2017年4月3日 7時) (レス) id: 2c836ec423 (このIDを非表示/違反報告)
魔導士カリナ(プロフ) - Chrisさん!イベント参加、ありがとうございました!私が言って良いのか分かりませんが...私、Chrisさんの文体とか凄く好きなんです。もしよろしければ、これからも作品を応援させていただいて宜しいでしょうか...? (2017年4月2日 23時) (レス) id: 0cf79671fa (このIDを非表示/違反報告)
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