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 蘭方医の雪村家の隣に、我が家――更科(さらしな)家はあった。
 雪村家の一人娘、千鶴は私よりも二つばかり年上だったが、私たちは分け隔てなく付き合っていた。
 時々私が熱を出そうものなら、すぐさま雪村家に担ぎ込まれた。

 私たちは成長して、千鶴は廿二(じゅうに)に、私は(とお)になった。
 千鶴は近所の道場に通い始め、剣道を学ぶようになった。

 ――私、護身くらいなら何とか出来るようになった気がするの。
 半年ほど経った頃、千鶴はそう云った。
 私も通い始めたのだけれど、どうにも上手く出来ず、三月(みつき)後には、幾ら教えても飲み込めない者は要らぬと追い出されてしまった。

 道場通いを止めてからさらに三月経った頃、父様は私に三振りの刀を下さった。
 鶴丸国永と薬研藤四郎と今剣。
 どの刀も昔馴染みなので、私は本当に嬉しかった。
 外出する時はいつも、薬研と今剣は懐に入っていたし、鶴丸は腰に差してあった。
 家に帰ると、三振りはみな人の形になるのが常だった。

 廿二(じゅうに)になった、ある日のことだった。
 父様は日頃の無理が祟ったのだろうか、病に倒れてしまわれた。
 三振りを除き、刀が刀剣部屋から出されることはなくなった。

 どのお医者様も、一様に首を振った。
 これは助からない――死病だ、と。

 雪村さんも時々見舞いに来て下さった。
 千鶴は、しばしば私を夕餉に呼んでくれたものだった。

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Chris(プロフ) - 魔導士カリナさん» コメントありがとうございます! 文体好きって言って貰えてすごく嬉しいです。応援……?! もうありがとうございますの一言に尽きます……。 (2017年4月3日 7時) (レス) id: 2c836ec423 (このIDを非表示/違反報告)
魔導士カリナ(プロフ) - Chrisさん!イベント参加、ありがとうございました!私が言って良いのか分かりませんが...私、Chrisさんの文体とか凄く好きなんです。もしよろしければ、これからも作品を応援させていただいて宜しいでしょうか...? (2017年4月2日 23時) (レス) id: 0cf79671fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Chris | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年3月27日 20時

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