【黒バス】星の座る場所【黄瀬涼太】

◆6.85◆ ページ8

体育館から校舎に向かって走る黄瀬を、標的にしたかの様に追いかけてくる化物。

「ぎゃああああああああっ!!ちょ、こっち来んなぁあああ!!」

海常ﾊﾞｽｹ部の厳しい練習で鍛えた脚をﾌﾙで生かして疾走する。

下駄箱を通り過ぎて、階段を駆け上がり廊下を走る。

それでも化物は背中を見せて逃げる黄瀬を追い続けた。

後ろから再び絶叫。

「くわらららららぁっ!!」

「ｷｼｮｲっスーーー!!」

もう頭の中ぐちゃぐちゃ。訳が分からないままとにかく走って走って走って走りまくる。






理科実験室が見えたので滑り込む様に中へと入った。

直ぐ様鍵を閉める。

本来なら入れる大きさではないが頭が警告を出して最大限の防御体勢を取る

鍵を閉めた瞬間、物凄い衝撃がﾄﾞｱから伝わってきた。

どうやら体当たりをしている様だ。

扉の手前に立っていた黄瀬は本能的な防衛反応で後ろに勢いよく転けてしまう。

「いてっ!!」

「きゅるるるるるぅ!!きゃきゃきゃきゃきゃ」

「ひっ……！」

ﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾄﾞﾝ。

壊れてしまうのではないかと思う程蹴破られそうになるﾄﾞｱは

やがて静かになった。

流石に無理だと判断したみたいで、怪物の気配は消えていた。

静寂の訪れた理科実験室の床で、黄瀬は漸く安心感を得られてｽﾞﾙｽﾞﾙと腰を抜かす。

真っ白になった脳味噌を休め、無意識に荒くなっていた息を精一杯整えた。

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

何度もちらつく、死体の映像。

踏み潰された板井さん。頭から平らになった早川ｾﾝﾊﾟｲ。引き千切られた三浦先生。

一瞬の出来事だった筈なのに、自棄に長く感じた。

短い時間の中で一体どれだけの人が死んだのだろうか。

生々しい血の跡と、数時間前まで生きていた人の肉を思い出して

黄瀬は胃に溜めていた朝食を上がらせて、水道に慌てて吐いてしまった｡





「げぇっ…う、ｺﾞﾎｺﾞﾎっ!!…ぅげ、がは、ぅぐっ……ｹﾞﾎｹﾞﾎっ!!」





吐くなんて、いつぶりだろう。

小さい頃、父さんとﾄﾞﾗｲﾌﾞに行って車の匂いに酔っちゃった以来っスかね…

なんて、呆然と過去の記憶に浸りながら気持ち悪い何かを全て吐き出した。

初めて目の当たりにした人が死ぬ様。

あまりの衝撃的な崩れ方に、黄瀬は身震いを止められなかった。





「っ……き、黄瀬…………」





「も、森山ｾﾝﾊﾟｲっ!?」

そこには

血を流している脚を押さえながら倒れている

森山がいた。

◆わからない◆→←◆前例なんて生易しい物は無い◆

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