【黒バス】星の座る場所【黄瀬涼太】

◆何の音◆ ページ5

『それでは前から順番に座って下さい』

冬の気温でぐんぐん冷えた体育館に体育座りさせられる。

男子はまだいいが、女子は「寒ぃ〜！」と手に白い息を吐き掛けていた｡

全校朝礼が始まった。

書道部と美術部の賞状の授与式を終わり、校長先生の挨拶から入る。





『え〜…本日も清々しい晴れた空を拝め、冬の寒さを吹き飛ばす程の………』





長い長い長い。

毎回思うが、何故教師は生徒に「時間に厳しく」と言うが

教師自身は朝礼の時間が長くなっても「風紀を乱したお前らのせいだ」と簡単に言えるのだろうか。

ｱﾝﾀ達の個人的な話もあるでしょーが。

なんて、永遠に続くかと錯覚する位に長い挨拶を右から左に流し

暇そうに黄瀬はくぁ、と欠伸をした。

あー…やっぱ眠てー…





『来週からは3年生も部活を完全に引退し、卒業考査や小論文作りに励む訳ですが…』





それから黄瀬は少し重くなった瞼を閉じると

簡単に睡眠の世界に浸ってしまった。









ぐちゃ、ぐちゃ。

ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。

「……………ほぇ。」

何かの音で目が覚めた黄瀬は、直ぐ様覚束無い瞼を開けた。

前にはまだ、校長が立って長々と話を続けている。

よかった。まだ挨拶の途中だ。

そろそろ終わる頃かな、と再びおはようの欠伸をすると

不意に背中をﾂﾝﾂﾝとつつかれた。

後ろを振り向くと、そこには同じｸﾗｽﾒｰﾄの板井さん。

普段大人しい態度をしている彼女は、黄瀬の嫌いなﾀｲﾌﾟではない。

だが逆に真面目な性格なので「起きろ！」と注意されたのかと黄瀬はちょっぴり慌てた。

「あ、ごめ、違うんスよっ」

「ねぇ涼太君、な…なんか聞こえない？」

「え？」





ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ

ぐちゃぐちゃ、ぐちゃ。ぐちゃ、ぐちゃぐちゃぐちゃ。





耳を凝らせば、なんて話じゃない。

体育館のｽﾃｰｼﾞ隣にある、舞台袖から何か、液体の音がする。

「…………聞こえる。」

「だ、だよね。今…皆も不審に思って、ざわつき始めてるの。」

ああ、起きる寸前に聞いた音はあれだったのか

「涼太君、俯いてたから気分悪くなったのかなって思っちゃった。ご、ごめんね？」

「いや、俺は大丈夫。板井さんは平気っスか？」

「うぅ…あまり好きな音じゃないから不快だけど…。なんだろね、この音。」

前を向いて、辺りを見渡す。

音は体育館中に響いている様で、脇に並ぶ先生も眉を歪めていた。

◆悪夢の始まりに気付かない幼子の群れ◆→←◆いつも通りの◆

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す