【黒バス】星の座る場所【黄瀬涼太】

◆駆け巡る恐怖◆ ページ3

名前も書かれていない茶便箋にﾅｲﾌって。

ﾄﾞﾗﾏの世界じゃあるまいし、そんな事有り得ないと思ってたのに。

楽屋の中でｷﾞﾗｷﾞﾗと輝くｿﾚは、何だか空気まで切り裂いてしまったかの様に

冷たい雰囲気を漂わせてしまった。

だが、運良くﾒｲｸ担当者には見られなかった様で、黄瀬は慌ててﾅｲﾌを鞄に突っ込んだ。

いや、というか何を慌ててんだ俺は？

意味が分からないまま、自棄に心臓をどくどくさせてしまう。

いや、待て。冷静になれ。何だよ、ﾌｧﾝﾚﾀｰにﾅｲﾌって!!

ﾅｲﾌが無くなった茶便箋の中をそっと覗き込むと、そこには1枚の手紙が入っていた。

まさか、これが所謂、脅迫という奴なのだろうか。

今まで、現代をときめくﾓﾃﾞﾙに対して嫉妬をした住民から悪口を書かれた手紙は

指で数える位の枚数はきたが

ﾅｲﾌが入ってるなんて、そんな、まさか。

ﾄﾞｷﾄﾞｷしながら手紙を開くと、そこにはこう綴られていた。









時が来るまで これで身を守れ









「はぁっ!?;」

思わず叫んでしまう。

流石の担当者も驚いてしまった。ﾋﾟﾝｸの眼鏡越しに目を見開いて問い詰めてくる。

「ちょ、どうしたの!?まさか悪質なｽﾄｰｶｰからの手紙とかじゃないわよね!?」

す、ｽﾄｰｶｰ!?

「ち、違うっスよ！親戚から頑張れって応援の言葉が書かれててちょっと吃驚しただけで…！」

だから俺はなんでこんなに庇ってんだよ！(汗)

苦笑いを浮かべると担当者は心配そうな表情を浮かべながらも

「そう…。夜道には気を付けてね…？」

と、声をかけてくれた｡

やはりこの人は心配性だ。

「ありがとう山北さん。」









その後、無事に仕事を終えた黄瀬は、暗くなった夜道を歩いていた。

鞄の中で鈍く光るﾅｲﾌに、山北の言葉を思い出し頭をぶんぶんと振る。



『まさか悪質なｽﾄｰｶｰからの手紙とかじゃないわよね!?』



ｽﾄｰｶｰ……ｽﾄｰｶｰなのだろうか？

確かにﾌｧﾝからは何度も待ち伏せをさせられた事はあるけれど

そんな執拗な感じでも無かったし、仕方ないと諦めてた。

それがまさか、酷くなって返ってきたとでも言うのか。

「………ぅ……鳥肌がっ……」

そろ〜…っと後ろを振り返る。

外灯が点き、道は多少明るい。住宅街も並び、助けはすぐに呼べる筈だ

だが黄瀬は、やっぱり恐怖を感じずにはいられなくて

何だか不気味な空気を吸い続けながら、小走りで帰宅した。

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