【黒バス】星の座る場所【黄瀬涼太】

◆動き始める歯車◆ ページ11

無我夢中で廊下を走り

涙と汗を飛ばしながら

夢を描く様に教室を探した

飽きていた日常に

窓の向こうを眺めながら

溜め息を吐き続けた学校の席

こんな簡単に普通が崩れるなんて

まるで現実に馬鹿にされた様な

悲しい孤独な自分が見えた気がして





脳内では解ってしまった森山の言葉

生きる為には もう諦めろと

生きるべき人間は自分よりお前だと

喉が枯れる程に叫ばれた命は

確かに今どくどくと脈を打っていた





黄瀬は辛い涙を頬に伝わせて

殴る様に鞄の中のﾅｲﾌを握り締めると

遠くから音がする化物から

逃れる様に全力で再び駆け出した





廊下には隣のｸﾗｽの子が倒れていた

下半身が無かったり

腕や脚が無かったり

けどそれらを直視する事はもう無かった

まともに見てしまえば

もうきっと 走れない





階段で下へ行こうとすれば

何故か階段に粘膜が張られていた

恐らく怪物が逃がさない様にと

人間を校舎に閉じ込める為の作戦だ

黄瀬は舌打ちをして上へ向かった

もう諦めかけている感覚がした





結局残ったのは黄瀬だけだったのか

最後まで追いかけられた黄瀬は

つい屋上に足を運んでしまった

逃げ場はない

鍵を閉めたが

怪物は天井ごと吹き飛ばした

右手にはﾅｲﾌ

前には未確認生物

揺れる金髪





正直こんなにも早く死ぬとは思わなかった

理由も原因も把握出来ないままとか

女に背後から殺られた方がﾏｼだったかもしれない

きゅるるるると鳴く怪物は

いつ黄瀬を喰おうかとﾀｲﾐﾝｸﾞを待ってた

もう

駄目かな

と思う





目を覚ます様な楽しさに

出会えただけで教えて貰えただけでも

まぁ良かったかな人生

なんて諦観して

自分の体から飛び上がる血飛沫を

少し想像してみる

不思議な最期に黄瀬は少し笑った





「ごめん、俺。」





死ぬ前に見る、過去の記憶が

早送りになって流れ始める

鮮やかに咲いた虹の華

絶望を知った雨の日

遠ざかった透明の少年

やっと逢えた海の人達

綺麗に彩る思い出はまた涙を産み

全てを終幕へ導く

怪物が走り出した

嗚呼

ごめん









さようなら









黄瀬は、そこで瞼をゆっくり開けた

何故か幾ら経っても痛みが襲ってこない。

目を開けてみると

手の届く距離に

その少女は立っていた

◆星降る朝◆→←◆裏返しの愛情と涙◆

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す