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第漆幕 彼女の身体 ページ8

瑠奈side

 現在地、北海道。寒くて寒くてたまらない。外よりは暖かいんだろうけど、それでも寒いものは寒い。肉付きの悪さと血行の悪さが祟って、多分人より寒いんだと思う。

「大丈夫、か?」

「これ、だいじょぶにみえる?」

「いや……あ、そうだ。う……篠宮、手、出して」

「なんで? いいけど」

 声を掛けてきたのは風丸一郎太。隣に座った彼は、差し出した手を両手で握り、あたため始めた。

「これなら、少しはあったかいだろ?」

 じんわりと熱が広がって、指先の感覚が戻ってくる。なんだかくすぐったくて、嬉しくて、呼び間違えられかけたことなんてどうでも良くなってしまう。

 誰にだって、思われたら嬉しい。自分のことを正しく知ってくれたら、もっと嬉しい。これからどこまで知ってくれるかは、彼ら次第だけど。

 ガタン、と音を立てて、キャラバンが止まる。

「人だ……」

 雪を払って乗ってきたのは、線の細い少年。私と同じように、ガタガタ震えている。

「あっ、窓際で何もかけてないから寒いのか! ほら、前行ってあったまってこい!」

「うわっ!?」

 前に向かえと放り出されて、パシンと背を押される。

 視線が集中する。居心地の悪さを感じて、そっと左手首に爪を立てる。

「え、と……」

「くちびる真っ青じゃない! なんでもっと早く言わないの?」

 返されたのは、至極真っ当な心配の言葉だった。あっという間に少年の隣に座らされ、毛布にくるまれ、温かいココアを渡された。

「あちっ」

「ありがとうございます。……ちゃんと冷ましてから飲みなよ、危ないよ」

「ん、わかってるけど……口の中も冷たくなってるから」

 ふー、ふー、と息を吹きかけながら、ちびりちびりと胃に落としていく。減り具合は少年の方が早く、他のキャラバンの面々と仲良く話していた。

「そうだなあ、蹴り上げたボールみたいに真っ直ぐに」

「その表現いいな! 君もサッカーやってるのか?」

 少年は円堂の質問にも微笑むばかりで、なんだか少し変な感じがした。何が、とは言えないけど、でも、確かに。

 なにか、なにか、違和感は無いか。じっと見ていると、気がついた彼が首を傾げた。

「どうかした?」

「いや」

 なんだろう、なんだろう。どこだ、どこだ。

「……」

「……えっ、と?」

「し、篠宮?」

「……なんでもない。ごめん」

 見ても、分からないや。ずっと不躾に見ててもお互い嫌だし、顔を逸らす。ここまでにしとこう。

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作者名:海道 凛 | 作成日時:2018年11月3日 19時

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