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二十章『想いのかたち』 ページ28

「っな……」

階段の上にいる大鵬と私達には距離がある。
それでも私が大鵬の気迫に押されていると。

「その言い方はあんまりです!」

青蘭が横から助け舟を出してくれた。
けれど。

「青! 今、ここにいる意味が分かっているのか!? 我はお前に命じた。この館を出ろ、と。そして……」

「Aを守るように、でしたね……」

「そうだ。わかっていて何故、戻ってきた」

今まで見たことがないくらい怖い顔で大鵬が青蘭を凝視した。

「Aがそれを願ったからに決まってます……!」

青蘭も負けじと、大鵬を睨み返した。
あの青蘭が。――大鵬に向かって怒鳴る。こんなの初めてだった。



「いいかげんにして!」

私は怒鳴った。
それから、つかつかと階段を上って昇って行った。

(なによ、なによ、なによ!)

私は無性に腹が立っていた。
私が知らないところで、大鵬が抱えていた秘密に。

(なんで相談してくれなかったのよ!)

「青は悪くない! 全部、私に内緒にして、こっそり逃がそうなんて都合がよすぎるのよ!!」

階段を昇りきった。
たぶん、私が大鵬にこんな風に怒るのは初めてだ。
少し狼狽した夫の目が泳ぐ。
背伸びして彼の黒衣の襟を両手でつかんだ。

「あんたは私の夫になるんでしょう?! だったら、ちゃんと話してよ!!」

「……」

大鵬が私から目をそらして。
私の手首を握った。

「結末は変わらない。我は人が好きだ。たとえ何があろうと、な。だから、この地で果てる未来が見えた時……古くから我に仕える老と朱には伝えた。逃げてもかまわぬと」

「それで……。それで、逃げた人いた!? いなかったじゃない!!」

当たり前だ。
皆、大鵬が好きだ。……大鵬が滅びを受け入れるというのなら。
老師父も朱ノ姫も、反対はしなかったのだろう。
大好きな人と最期を共に。
そう思うのは自然な気持ちだ。

(……なのに)

私はぎりりと、歯噛みした。

「なんで、私には言ってくれなかったのよ!! 青だって、真実を知らされて、それを私には黙って役目を果たそうとしてくれた。家族の危機を知っていて、それでも逃げることが、どれだけ辛いことか……、大鵬なら想像がついたはずだよ!?」

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設定タグ:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します!! 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます! おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします(多謝) (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年8月31日 10時

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