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「我は……。我は老も朱も……青もAも……皆(みな)好きだ」
返ってきた声は、叱られた子どもみたいに。
罰が悪そうな、ぼそりとしたもの。
顔をうつむけて、喋るその人は、私の知っている大鵬じゃないみたい。
――でも。
だからこそ。
今。
大鵬は本心を語ろうとしてくれていると思った。
「うん……、知ってるよ」
私は夫の襟をつかむ手の力を緩めて。
ただ、ただ。
優しく頷いた。
「できれば皆(みな)に生きて欲しかった」
「うん」
「――だが。我は長く生きた。我は館の皆(みな)が好きだ。だが、人も好きだ」
「知ってる。……大鵬のその真心が。おおよそ人間らしくない……子どもらしくなかった私の心を人間らしくしてくれた」
「――A」
大鵬が私の腕をつかむ力を緩めた。
「……大鵬が、私の心を救ったんだよ」
腕に絡んだ夫の手を優しく払って、背伸びした。
そのまま、夫の首元に腕を伸ばす。
「大鵬がいてくれたから、私は笑うことも、怒ることも、泣くことも……たくさんの感情を出せるようになったよ」
「……そうだな。お前は、はじめて我のもとに嫁してきたときから随分と変わった」
「うん」
大鵬が、私の体を抱きしめた。
私も彼の首にしがみつく腕に力を込めた。
大鵬が私をさらに強く抱きしめる。
「――人は変わるものだ。Aのように変わるだけでなく。歴史が流れれば、人は古(いにしえ)の神を必要としなくなる」
「……」
「我は人によって力を得ていたからな。その『人』が我を必要としなくなったのであれば、それで構わぬと思ったのだ」
「……それでも、私は大鵬に生きてほしいよ。だって、私は……」
――私は大鵬の花嫁だから。
そう言いつのろうとした言葉を遮って、夫は言った。
「我より更に長い時を過ごし、世の移りを見てきた老は、我に賛同してくれた。朱もまた……「しかたがないのう」と笑っておった。だが……」
「……？」
言葉に詰まった夫の顔を見た。
真剣な顔。
「青はまだ若い。そしてAもだ。まして、お前は人間。我とともに運命に準じる必要はないと思った」
「……え」
私は凄く呆けた顔をしていたと思う。
「――どうして？」
疑問を口にして。
そうしたら。
また、腹が立ってきた。
「私は大鵬の花嫁だもの！ 来年には正式な夫婦になるんでしょ！？ 大鵬の一存で、勝手に私の未来まで決めないでよ！！」
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します！！ 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (
レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます！ おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします（多謝） (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一花 | 作成日時：2014年8月31日 10時
